高齢者見守り:家電で ポット、テレビ、携帯…使うと遠くの家族に情報

2012年09月30日毎日新聞

 1人暮らしの高齢者が自宅のポットでお湯をわかしたり、テレビを操作したりすると、離れて暮らす家族や地域の支援者にその情報が届く−−。そんな家電が増えている。緩いつながりで日常の様子を見守ることができるのが特徴。孤独死対策を含め、高齢者の「見守り」のあり方を模索する自治体などの注目も集めている。【下桐実雅子】

 「毎朝6時に電源を入れて、夜9時に切るのが習慣。みんなが心配するからね」

 東京都豊島区の大塚孝子さん(93)宅は、食卓の横が電気ポットの指定席。何気ないポットだが、実は無線通信機を内蔵している。

 象印マホービンの「iポット」。大塚さんが給湯した時刻などを1日2回、メールで利用者の家族に知らせている。ポットについている「おでかけボタン」を押せば、外出時刻を知らせることも可能。専用ホームページが用意され、利用者ごとの1週間分のデータをいつでもグラフで見られる。利用料は月額3150円だ。

 山梨県で暮らす次男(67)は月に1回、大塚さんの様子を見に来るが「毎日のメールで安心できる」と言う。

 大塚さんが住む地域の市民団体「おたすけクラブ」は、ポットを使った高齢者の見守り活動を長年続けている。ボランティア7人が交代で、大塚さんらの利用状況をパソコンで確認。給湯していないなどの異変があれば、電話や訪問をする。

 伊東純子副代表は「その人の生活パターンが一目で分かる。『見回りに来てもらうのは煩わしい』という人の安否確認にも良いシステムだと思う」。1人暮らしの高齢者が、夜間に何回も給湯していたことに気づいて医師に訪問を依頼し、病気が分かったこともある。

 シャープは昨春から、インターネットに接続できる液晶テレビに無料の見守りサービスをつけた。電源が入った時や24時間操作がなかった時に、家族にメールが届く。埼玉県北本市がこのサービスを応用し高齢者の安否確認に役立つかどうかを実験した。

 「見守り携帯」も相次ぎ登場。NTTドコモは昨年、高齢者向け機種「らくらくホン」の一部に、電話機の開閉や歩数計の歩数を家族に知らせるサービス(月額使用料105円〜)を始めた。神奈川県の座間市社会福祉協議会は地域での見守りに試用。自治会や見守りボランティアの負担感の軽減につながったという。

 KDDI(au)の「ミルック」(月額利用料1095円〜)は歩数計型。外出時は歩数計が、自宅では充電用の卓上ホルダーに付いたセンサーが、利用者の動きをメールで知らせる。緊急ブザーを備え、通話も可能だ。

 北海道の室蘭市社会福祉協議会は今年、独居の高齢者らにこの歩数計の貸し出しを始めた。家族が異変を感じたら、民生委員や近所の人に様子を見に行ってもらう。

 担当者は「隣人だけで見守るには覚悟がいる。機器を導入することで、離れていても家族のかかわりを作りたい」と話している。