メールで「元気」高齢者安否確認システム…大阪
2012年09月10日読売新聞
大阪府富田林市のNPO法人などでつくる団体が今年2月に始めた、携帯電話を利用した安否確認システム「おはよう伝言板」が、開始から半年余りで利用者が約170人に達する人気だ。
登録者同士のお食事会や、携帯電話の使い方教室などコミュニティーづくりにつなげているのが特徴で、専門家も「高齢者の生活を豊かにするシステム」と評価している。
高齢者らにパソコン教室を開くNPOなど6団体でなる「シニア丸得ねっとプロジェクト」(同市小金台)が、府の「新しい公共の場づくりのためのモデル事業」の補助金を使い、市内の希望者に無料サービスしている。
午前7時、メールを登録者の携帯電話に一斉送信。利用者は、画面の「おはよう」「相談」「買い物」のいずれかの項目をチェックし、返信する。「おはよう」で安否を確かめ、「相談」「買い物」にチェックがあれば、行政の相談窓口を紹介したり、買い物を代行したりする。
返信がなければ、スタッフが電話し、離れて暮らす家族に連絡する。
さらに、利用者の「憩いの場」として事務所を活用。操作法を学ぶ携帯電話教室を連日午前9時~正午に開くほか、月1回、1500円前後の実費で、お食事会も催される。スタッフがフランス料理などを手作りし、毎回15人ほどが参加する。
登録者の和田清さん(80)は「万が一のときの不安がなくなり、携帯電話の使い方も覚えられた。今は教室で知り合った仲間との会話が楽しみ」と喜んでいた。
同団体は現在、登録者を同市に限定しているが、来年以降、府内や全国に広げることも検討しているといい、妹尾美千代代表(46)は「利用者の笑顔がスタッフの励み。老人会や自治会に出向き、さらに登録者を増やしたい」と話している。
登録などの問い合わせは同プロジェクト事務局(0721・26・7887)へ。
交流に発展、重要
高齢者の安否確認の方法としては、大阪ガスと神戸市が2002年、独居のお年寄りに対し、ガスの使用量から異変を感知するシステムを導入。家電では、湯沸かしポットの利用状況をメールで、別居の家族が確認できるシステムもある。
豊中市社会福祉協議会は、5月から有料で登録者に週1回、安否確認の電話をかける「安心コール事業」を開始。東日本大震災の被災地・仙台市は9月、仮設住宅の高齢者に携帯を配布。安否確認や相談を受け付けるサービスを始めた。
結城康博・淑徳大准教授(社会福祉学)は「高齢者の見守り活動は、人と人の交流まで発展させることが重要。横のつながりがあれば、万一のときも誰かにSOSを発信できる」と指摘する。