孤独死:統一基準設定に賛否 独自定義、数値に差 鹿児島県統計24人、民間研究所では427人

2012年09月02日毎日新聞

 全国で深刻なケースが頻発し、社会問題としてメディアなどに取り上げられている孤独死。だが毎日新聞の調べによると、発生件数を把握しているのは47都道府県のうち3県にとどまり、その実態は分かっていない。背景にあるのは「孤独死」のとらえ方の難しさだ。「国による統一基準」を求める声はあるが、自治体の間でも定義を設けるべきか賛否が分かれている。

 全国で2万6821人。民間研究機関「ニッセイ基礎研究所」が11年に公表した65歳以上の孤独死の年間推計値が現在、国内で孤独死がどれだけ発生しているかを知る唯一の目安となっている。定義は「自宅で死亡し、発見まで2日以上経過」。東京23区の変死体などを扱う東京都監察医務院が毎年公表している「自宅で死亡した独居者」のデータを基に各県の推計値がはじき出されている。

 だが、同研究所の推計値は、独自に孤独死の統計を取っている自治体の数値と開きがある。例えば、鹿児島県内の孤独死の発生について、同研究所は年間427人と推計しているのに対し、県が同様の定義で市町村から集計したのは24人(10年度)にとどまる。

 県社会福祉課は「どちらが正確な数字か判断できない」と実態把握の難しさを認めるが、「何年か取り続ければ傾向がつかめるのではないか。データを各市町村に示すことで孤独死対策を促すきっかけにもなる」と統計の意義を強調する。
 一方、UR(都市再生機構)は毎年、「独居者で誰にも看取(みと)られずに死亡した」ケースを孤独死としていたが、昨年10月から「死後1週間以内」は統計から外すことにした。「家族と別居していても毎週1回会ったり、地域のサークルに毎週参加している人も少なくない。1週間以内の発見であれば必ずしも孤独だったとは言えない」と説明する。

 その結果、従来の定義なら09年度は665件だったが、新しい定義だと169件と4分の1。しかし、福岡市のUR長住団地の小金昇・自治会長は「人の死に1日も1週間も違いはない。定義を狭めることは事実から目をそらすことになる」と疑問視する。

 どのような定義を設けるかによって数値が大幅に変動するため、毎日新聞の都道府県への調査では「定義づけによって孤独死対策の対象範囲が狭まったり、漏れる人が出てくる可能性がある」(千葉、栃木県)と慎重な意見があった。「できれば全国統一基準を出してほしい」(福島県)と国による定義づけを求める声もあるが、厚生労働省は「行政が防止策を講じることの方が重要だ」(地域福祉課)と否定的だ。【三木陽介、門田陽介、関東晋慈】

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 ◇九州・山口の孤独死推計数
     推計人数
山口    389
福岡    1036
佐賀    198
長崎    346
熊本    399
大分    276
宮崎    266
鹿児島   427
沖縄    205
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全国計  26821
(ニッセイ基礎研究所調べ、死後2日以上経過)