北陸の建設業界、介護に続々参入 市場縮小で多角化
2012年08月30日北國新聞
北陸の建設業界で、高齢者向けサービス事業への参入が相次いでいる。公共事業や民間 投資が減り建設関係の市場が縮小する中、高齢化を背景に成長が見込める介護分野での経営多角化を図る狙いなどがある。昨年10月の制度化を追い風に「サービス付き高齢者向 け住宅」を管理運営するケースが目立つ。
サービス付き高齢者向け住宅はバリアフリー構造で、入居者の見守りや安否確認、生活相談サービスを行う。国から建設費の補助を受けられ、着工前や完成済みの両方の物件を 含め、29日現在、石川で25件、富山で16件の登録がある。
住宅建設業などの正栄産業(富山市)は、サービス付き高齢者向け住宅を管理運営する子会社「正栄ウェルフェア」を設立した。
来年2月の完成と開業を目指し、9月にも富山市秋吉でエレベーターや緊急通報装置、車いす用のトイレを備えた2階建て50戸の高齢者専用の賃貸住宅「太陽のプリズム秋吉 」を着工する。総事業費は非公表。
同社は「高齢化の進展を受け、今後、富山市でさらに同様の住宅の建設を進める」(担 当者)としている。
佐藤工業北陸支店(富山市)は今年、石川で介護施設を展開する岩倉建築設計(金沢市 )と共同出資で、介護施設の運営会社「マルティバース」(同)を設立した。来年以降にサービス付き高齢者向け住宅の運営を手掛ける計画を検討中だ。
同社は4月、金沢市増泉1丁目でショートステイサービスをメーンとする高齢者施設「 マナの家増泉」(36床)を開業。「稼働率はほぼ100%」(総務部)で、今秋にも高岡市京田でショートステイ専用の施設(30床)の建設に入り、来年5月にも開業する。
同社の川畑敏一総務部長は「事業多角化のほか、利用者目線の施工を知ることで、本業で施設工事を受注する際の提案力の強化にもつながる」と利点を説明する。
このほか、北陸電気工事(富山市)がサービス付き高齢者向け住宅の管理運営を行う孫 会社「共生舎」を設立し、年内にも同市豊田町の旧富山支店跡地に6階建て85戸の同住宅を建設する。
新たに高齢者住宅の仲介事業に乗り出す建設業者も出てきた。
トーケン(小松市)は今月1日、金沢市の同社金沢本部に子会社が運営する仲介センタ ーを開設。10月から希望者の相談に応じ、有料老人ホームなど民間施設の紹介をスター トする。
現在は高齢者住宅との提携を進め、スタート時は石川県内の20施設ほどが紹介先とな る予定。トーケンは「高齢化社会を迎え、施設の建設が進む中でニーズが高まっていくだろう」としている。