孤死時代:宮崎 / 下
県営住宅 世代間交流を後押し 「向こう三軒両隣」モデル事業 / 宮崎

2012年08月20日毎日新聞

 「親族・地域との交流が極端に希薄になる『無縁社会』が問題になっている。高齢者を地域全体で見守り、支える体制が必要だ」。県は3月、新たにまとめた高齢者保健福祉計画で警鐘を鳴らし、見守り活動などのソフト面に加え、新築の県営住宅に設計段階から孤独死防止策を盛り込むなど、ハード面の対策にも乗り出した。

 県建築住宅課によると、県営住宅に住む計8327世帯のうち、65歳以上の世帯は約2200世帯(26%)。このうち半数近くは一人暮らしで、統計のある06年以降、年平均2人が孤独死している。県は昨年度から、75歳以上の独居住人のうち希望者約320人の安否を月1回確認しているが「完全ではない」(建築住宅課)のが現状だ。

 そんな折、昨年秋に完成した県営小戸団地の新築棟(宮崎市鶴島、28戸)で、思いがけない現象が起きた。

 同棟は、育児で悩む母親らが孤立しないよう、未就学児が2人以上の世帯に16戸を割り当てた。残り12戸に高齢者らが入居したところ、世代間の交流が活発化。住民同士が声を掛け合い、育児の悩みや一人暮らしの不安などを共有した。世代を超えた見守り環境が自然発生していた。

 これを受け県は、子育て世代と高齢者が自然に交流できる住環境づくりを県内全域に段階的に拡大することを決定。まず、今年度中に着工する県営ひかりケ丘C団地(同市佐土原町、22戸)をモデル事業に選んだ。

 C団地の基本方針は「向こう三軒両隣」。玄関が向き合い、住人同士が顔を合わせやすい木造長屋型。アプローチなど共有部分に面して「ぬれ縁」も配置して、相互交流を促すデザインを採用した。入居者は、子育て世帯と独居高齢者らの割合を6対4とする予定だ。
 建築住宅課の楠田孝蔵・公営住宅担当リーダーは「孤独死対策は周りに声を掛けてもらうのが一番良い。福祉担当部署ではないが、可能な範囲で、少しでも孤独死を減らしたい」と話している。(この連載は門田陽介が担当しました)