孤死時代:宮崎 / 中
見守り活動 切れたつながり、住民同士で情報交換 / 宮崎

2012年08月19日毎日新聞

 家族とのつながりが切れた人がいる─。宮崎市での災害発生時、避難支援が必要な高齢者らの情報を関係機関が共有し始めた06年、要援護者台帳を管理する同市社会福祉協議会に気になる報告が集まるようになった。

 社会的孤立の傾向を示す報告はその後も増え続け、市社協は「この問題は孤独死につながりかねない」と判断。10年度、孤独死の実体を探るため、地域の実情に詳しい民生委員と自治会の協力を得て調査に乗り出した。

 その結果、市内で07~09年に把握された孤独死者数は計119人。年齢は▽80代(39人)▽70代(22人)▽60代(16人)と60代以上が7割を占め、30?40代も3人いた。多くは死後3日以内に発見されていたが、1カ月以内(4件)や1カ月以上(3件)もあった。死因の多くは病死で、餓死も1人いた。

 調査を担当した市社協地域福祉係の川崎紀代子係長は「発見まで1週間以上かかる場合は自治会未加入者に多い」と分析。孤独死防止には「介護サービス、民生委員、遠方の家族、近所の住人らで万が一の場合どうするか、申し合わせることが理想だ」と話す。

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 住人の4割が60代以上と、高齢化が進む宮崎市の大塚台団地の自治公民館で6月初旬、「大塚台見守り推進合同研修会」があった。民生委員や福祉協力員、自治会長、まちづくり団体メンバーら約70人が立場を超えて集まり、孤独死リスクが高いとされる一人暮らしの高齢者らの見守り態勢づくりについて話し合った。

 「あそこの家は最近ご主人が亡くなって一人になった」。参加者は自治会単位の班に分かれた後、持ち寄った情報を交換。「ゴミ出しをそっと手伝う」「洗濯物を干しているか見る」など、できる事を箇条書きにする班もあり、思い思いの取り組みを協議した。

 大塚台地区社協事務局長の河野工さん(75)は「老人会の集まりで『あの人が来ていない』と会話すればそれが見守りになる。そこから細かくして、地区なりの対処の方向性を見つけたい」。同団地で起きた孤独死は過去7年で1件のみ。その数は住民一体の取り組みで維持されている。