人口5000万人突破、韓国で進む急速な老い
論説副委員長 池田元博

2012年07月10日日経新聞

 韓国の人口が先月、5000万人を突破した。1人当たり国民所得が2万ドル(約160万円)を超えている国では、世界で7番目という。つい数年前まで5000万人突破は非現実的との悲観的な予測が出ていただけに、ほっと一安心といったところだろう。しかし、日本以上に速いテンポで少子高齢化の波が押し寄せていることも忘れてはならない。

■出生率は一時1.08に

 韓国の人口は1967年に3000万人を超えた。83年には4000万人を突破し、それから29年で5000万人まで増えたことになる。

 政府が試算した長期予測では、今後も人口は増加し、2030年には5216万人に達する見通しだ。しかし、それをピークに45年には再び5000万人を割り込む公算が大きいとしている。

 その最大の要因は少子化だ。韓国はもともと出生率が高かった。70年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子供の数)は4.53、80年は2.82だった。政府もかつては出産の抑制を奨励していたほどだ。

 ところが、その後急速に低下傾向が強まり、05年にはついに1.08と、世界最低水準にまで落ち込んでしまった。「人口5000万人の達成は困難」と一時期推計されたゆえんでもある。

 価値観の変化、女性の社会進出、晩婚化、厳しい雇用事情、膨らむ育児・教育費の重荷……。こうした様々な要因が、韓国の少子化に拍車をかけている。

 たとえば女性の社会進出をとってみよう。韓国統計庁によると、25~29歳の女性の経済活動参加率は80年に32.0%だったのに対し、10年は69.4%に達している。女性の平均初婚、出産年齢も81年がそれぞれ23.2歳、27.1歳だったのが、10年には28.9歳、31.3歳まで上昇した。

 加えて、結婚しても子どもを持つことをためらう夫婦も増えている。日本以上に厳しい競争社会のなか、親は子供を一流大学、一流企業に入れたいとの願望が強い。このため幼いころから子供を塾に通わせたり、海外に留学させたりする傾向が強まっており、相当な教育費負担を強いられるからだ。

 韓国はサムスンを筆頭に、一部の巨大企業グループが経済をけん引している面が大きい。大企業と中小企業の賃金格差も広がっている。こうした格差社会が子供の教育熱に拍車をかける一因となっている。

■育児・教育支援に躍起

 少子化の進行に伴い、人口構造も急速に変化しつつある。国連などの推計によると、韓国の人口全体の平均年齢は10年が37.9歳だったが、40年には52.6歳まで上昇し、日本と肩を並べるとみられている。

 より深刻なのは、少子高齢化がもたらす生産可能人口(15~64歳)の減少だ。韓国統計庁によると、生産可能人口は4年後の16年をピークに減少し、40年には2887万人となる見通し。10年(3598万人)と比べて約2割も減少する計算だ。この結果、韓国の潜在経済成長率は1%台に低下するとの予測も出ている。

 韓国政府も手をこまぬいているわけではない。06年に5カ年の「低出産・高齢社会基本計画」を打ち出し、育児・教育支援の拡充などに乗り出した。さらに10年には第2次の基本計画をとりまとめた。

 従来は低所得者層に限っていた保育・教育費支援を中間層まで広げたり、育児休業制度を拡充したりするなど、共働き世帯への支援を拡充したのが特徴だ。3人以上の子供をもつ家庭の住宅支援、第2子からの高校授業料支援なども盛り込んでいる。

 こうした成果があったどうかは不明だが、出生率はわずかながら上昇傾向にある。それでも11年の合計特殊出生率は1.24と、日本(1.39)よりなお低い。少子化対策に苦慮するのは日本も韓国も同じだ。日韓がともに情報を持ち寄り、妙案を考えていく機会をもっと増やしてもいいのではないか。