スマホなど、シニアも使い勝手よく

2012年06月28日日経新聞

 スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)やタブレット端末向けに、高齢者に便利なアプリ(応用ソフト)やサービスが充実してきた。スマホやタブレットは若者やビジネスパーソンの間で急速に普及しているが、指で画面に触れるという操作のわかりやすさは高齢者にも適している。加齢による肉体的な衰えを補ってくれるアプリのほか、離れて暮らす家族などが簡単に安否確認できるアプリなども出ている。

■指先が不自由でも

 6月中旬、市民団体「インターネットと明日の福祉を考える市民の会」が主催したシニア向けスマホ講習会。「シャンソン仲間がタブレットで練習風景を録画するのを見て、私もやってみたいなと思ったの」。東京都豊島区に住む清水弘子さん(78)はスマホを片手に話す。参加者の操作はまだたどたどしいが、説明を聞く表情は真剣だ。

 ボランティアで講習会のアシスタントを務める長坂武さん(78)は、初めて持った携帯電話がスマホというヘビーユーザーだ。お気に入りは、米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)4S」の目玉機能である人工知能を使った音声ガイド「Siri(シリ)」。「指先が震えたり、障害で不自由だったりする仲間でも『自宅に電話』と話しかけるだけですぐ操作できるのが便利」と話す。

 こうした高齢者や体が不自由な人を念頭に置くアプリは、ほかにも続々と開発されている。

 老眼が進み、本を読むのもすっかりご無沙汰というシニア層には「豊平文庫」や「i文庫」などの読書アプリが便利だ。著作権切れの文学作品を読めるウェブサイト「青空文庫」のデータを取り込み、本物の文庫本に似せた装丁で読める。無償版か有償版かで機能や操作方法は多少違うが、どちらも好みの大きさに文字を拡大できる。タブレット対応のアプリなら画面が大きい分、さらに読みやすい。

 新聞を読むにも拡大鏡が手放せない人には、iPad用アプリ「拡大鏡ルーペ虫眼鏡」がある。iPadの背面カメラを通して新聞紙面などを画面上にそのまま映す。画面上に2本の指を置き、はじくように広げればその部分を拡大表示できる。

 年齢を重ねるにつれ、視力に限らず、高血圧や肥満など様々な問題が生じてくるものだが、スマホを使えばこうしたデータの管理も簡単になる。

 食品大手のサントリー食品インターナショナルは、iPhoneとアンドロイド端末の両方に対応したアプリ「血圧おやじの健康帳」を無償で提供している。血圧測定の結果や摂取カロリー、運動量を入力すると、グラフにして生活習慣や健康状況を把握しやすくする。

■薬の飲み忘れ防ぐ

 医療へのIT(情報技術)の応用を研究する東京大学大学院医学系研究科の健康空間情報学講座が昨年11月発表したアンドロイド対応アプリ「あっ!くすりLite」は、飲むべき薬と時間を指定すると飲み忘れを防げるのが特長だ。処方箋の2次元バーコードを読み取って薬の名前を登録する機能も付けた。

 高齢の親を持つ人にとっても便利なアプリは多い。宮崎市のIT企業、インタープロが開発した「みまもりホン」は、親のスマホにインストールしておけば子供が離れて暮らしていても安否確認できるアンドロイド対応アプリだ。親のスマホが一定時間操作されないと、それを関知して事前に指定した宛先にメールを送り、親の身に何かあったのか子供に確認を促す。

 「パソコンは難しくて挫折した」。そうあきらめていた高齢者でもスマホやタブレットは使ってみたら意外に簡単だったとの声は多い。使い始めには周囲のサポートが大切なため、離れて暮らす親と夏休みで会った時などに利用を勧めてはどうだろう。