空き周波数帯で無線網 高齢者安否確認に / 宮城

2012年05月24日朝日新聞

 使われていない電波の周波数帯「ホワイトスペース」を利用して、災害時にも切れにくい無線による高齢者の安否確認網を作ろうと、総務省東北総合通信局が検討を進めている。すでに仙台市内では使われていない周波数帯を確認。今年度は実際に通信ができるか実験する予定だ。

○仙台で実験へ「日常でも」

 テレビやラジオ、携帯電話など、身の回りには、さまざまな周波数の電波が飛び交っている。しかし、地域ごとに使われていない周波数帯があり、ホワイトスペースと呼ばれる。例えばテレビ放送が地上デジタルへ移行したため、従来の地上アナログの周波数帯は現在は使われていない。


 総務省によると、ホワイトスペースは、空港や商業施設など狭い地域に限った、携帯電話のワンセグ放送などに使われている例がある。九州総合通信局ではインターネット回線としての利用を検討している。


 東北総合通信局は、福祉事業者などが独り暮らしの高齢者らと無線通信するのに使えないかと、昨夏から調査を開始。東日本大震災では、携帯電話やインターネットが停電や故障で使えなくなった。担当者は「簡単な無線機なら電池で動くし、ケーブルも引かれてないので、災害時にも切れにくい」と利点を説明する。


 同通信局によると、地域福祉の窓口である地域包括支援センターや福祉事業者などを中心に、半径2~3キロの範囲で無線の送受信をする仕組みを検討。高齢者の自宅からは、声だけでなく、血圧や脈拍などのデータを送ることも想定する。


 震災時には電話がつながらない中、約300人の高齢者の安否確認に追われたという仙台市の高齢者福祉施設「せんだんの杜(もり)」の舟越正博・総合施設長は「だれからの連絡かわからないので、電話に出たがらないお年寄りもいる。非常時だけでなく、日常的な連絡にも使えれば」と期待する。


 同通信局によると、昨夏からの調査で、仙台市内にもホワイトスペースがあることを確認。今年度は実際に無線電波を飛ばし、ほかの放送や通信電波をじゃませずにやり取りができるかどうか実験するという。


 東北工業大の工藤栄亮(えいすけ)教授(無線通信工学)は「新たな技術や設備の開発がいらないので、実現可能性は高い」と話している。(福島慎吾)