蕨の白骨遺体:水道も止められ 「孤立死」住民に戸惑い /埼玉

2012年04月03日毎日新聞

 蕨市塚越4のアパートで1日、死後2年以上が経過した男性の白骨遺体が見つかった。このアパートに住んでいた無職男性(45)とみられるが、その後の蕨市の調べで、男性が電気に加え、水道も止められていたことが分かった。都会の片隅で再び起きた「孤立死」に、地域住民は「なぜ」という戸惑いを隠せない。【田口雅士、狩野智彦、山本愛】

 JR蕨駅から南東へ約1キロ。男性の遺体が見つかった木造2階建てのアパートは住宅街の一角にある。6部屋あるが空室も目立つ。

 男性は数年前からアパート2階に住んでいたとみられる。町会長の男性(72)は「人の出入りが激しく、町会との接点がなかった。市などには、1人暮らしや生活保護世帯について教えるよう申し入れているが、個人情報の保護が壁になって把握が難しい」と言う。蕨市によると、男性は07年5月~08年10月、生活保護を受給していた。受給が止まった経緯について、市の担当者は「答えられない」と話す。

 県警の調べでは、男性は同年末まで家賃を振り込んでいたが、その後は滞納していた。捜査関係者は「大家も病気で入退院を繰り返しており、家賃の滞納に気付かなかったようだ」と打ち明ける。

 半年後の09年6月、水道もストップする。蕨市は「今回は働き盛りの40代の男性単身者。単身世帯が急増する中で、どの世帯も気を配っていたらきりがない」と言う。

 さいたま市や川口市で孤立死が相次いだことを受け、蕨市は3月30日、水道メーターの検針などを委託している業者と、住民の異変を察知した場合の通報体制をつくったばかりだった。アパート近くに住む男性(76)は「なぜ誰も気がつかなかったのか。今後もこうした問題が出てくるだろう」とため息をついた。