70代の母と障害ある息子「孤立死」、旭区の住宅 /横浜

2012年03月17日神奈川新聞

 横浜市旭区の住宅で昨年12月、70代の母親が病死し、その数日後に障害がある40代の息子が死亡していたことが16日、関係者への取材で分かった。誰にも気付かれずに亡くなり、死後しばらく経過して発見される「孤立死」とみられる。

 旭署などによると、昨年12月6日午後3時45分ごろ、同区中希望が丘の住宅で、この家に住む女性(77)と、息子(44)が死亡しているのを通報で駆け付けた同署員が発見した。

 通報したのは、死亡した男性が約3カ月前まで通所していた福祉施設の職員。職員は、不定期に2人の自宅に電話を入れていたが、同日電話した際、母親が対応しなかったため同方を訪ねた。施錠されていなかったトイレの窓を開けて室内を確認すると、男性が倒れているのが見えたため、警察に知らせたという。

 女性は台所で倒れており、死後1週間程度経過。男性は発見の前日に亡くなったとみられる。

 司法解剖の結果、女性の死因は解離性大動脈瘤(りゅう)破裂で、男性は肺気腫と呼吸不全だった。

 関係者によると、女性は高血圧で糖尿病を患っていた。一方、男性は小児まひに加え、重度の知的障害もあった。自立歩行のほか、介助なしでは食事などもできず、昨夏に父親が亡くなった後は、母親が1人で息子を世話していたという。

◆地域とのつながり希薄

 関係者らによると、親子と地域とのつながりは希薄だったようだ。親子は町内会に入っておらず、近所付き合いもなかったという。母親に何度も町内会に入るよう勧めたという無職男性(72)は「親子が今、どういう状況なのか、知るすべがなかった」と肩を落とす。

 親子が住む地域は、民生委員が70歳以上のみの世帯を定期的に訪問している。だが、この親子の世帯は40代の息子がいるため、その対象から外れていた。民生委員の60代の女性は「どんな家族構成かも知らなかった」と話した。

 男性は福祉施設への通所を昨年9月からやめていた。母親は11月、「息子が施設に行きたがらない」と区に相談していた。

 孤立死の発覚が全国で相次いでいることから、横浜市は今月下旬から、生活保護や高齢者福祉、障害者福祉などの担当者を集め、対策を検討する予定という。川崎市や相模原市は高齢者世帯への見守り活動を強化するよう、民生委員らに依頼したという。ある担当者は「年齢だけで世帯の状況を把握している現状では、障害など個々の事情を見抜くのは難しい」と明かした。