孤立死 実態を調べて防止策を立てよ─社説

2012年03月14日愛媛新聞

 障害者、高齢者と家族の「孤立死」が各地で相次いで発覚している。

 札幌市では1月に40代の姉が病死し、妹が凍死しているのが発見された。2月には東京都立川市のマンションで死後約2カ月経過した母親と4歳男児の親子の遺体が、さいたま市のアパートではミイラ化した60代夫婦と30代息子の遺体が見つかった。

 今月上旬には、孤立死を防ぐ取り組みの検討を始めたばかりの立川市の都営アパートで、高齢の母娘の遺体が見つかった。

 いずれも生活に困窮したり障害者や高齢者を抱えるなど、福祉の手が必要な人たちだった。誰にも気づかれぬまま命を落とした人たちの無念は、計り知れないものがあろう。相次ぐ孤立死は、行政や福祉の網からこぼれる人たちを支える困難さを、あらためてわれわれに見せつけた。

 手を差し伸べるすべはなかったのか。これまでに同様のケースはなかったのか。命にかかわる問題である。すべての自治体は実態を調査し、孤立死を防ぐ手だてを考えていかなければならない。

 なかでも障害者を抱える母子、父子家庭などは孤立するリスクが高いようだ。早急に実態把握に努めなければならない。

 2月に立川市で母子が遺体で見つかったケースは、母親が病気で急死した後、知的障害のため自力で食事が取れない男児が餓死したとみられている。母子は2010年4月に同市に転居した。2人暮らしで、近所付き合いはなかったという。

 ただ、継続的に母子と会っていたおむつの宅配業者が、今年1月になって、応答がないことを市に報告。ケースワーカーが2度訪問したが、接触できないまま「旅行などで不在」と判断し、室内までは確認しなかった。

 プライバシーなどの問題を考慮したのだろうが、最悪の事態を想像して対処すべきではなかったのか。残念でならない。

 行政には、障害者や高齢者を対象にしたさまざまな支援、相談制度がある。それらが住民に十分周知されているか、いま一度検証しておかなければならない。

 また、申請が来るのを単に受け付けるだけでなく、地域に出かけて情報をこまめに収集し、手助けの必要な人を見つける努力が求められる。支援を受けることに消極的な人もいようが、待ちの姿勢を改め、積極的に関わることも時に必要だ。

 弱者を差別視していないか。知らず知らずのうちに排除していないか。相次ぐ孤立死は現代社会への問いかけである。障害者や高齢者を地域に抱え、支えていく社会が求められている。