お年寄り見守り18年 /富山

2012年03月01日 朝日新聞

黒部市社協「ネットワーク」
主力は「ご近所さん」■新聞配達員らも連携

 お年寄りを地域全体で支えようと、黒部市社会福祉協議会(比川信夫会長)が取り組む「見守りネットワーク」が、開始から18年たった。市民がお年寄りの「みまもり員」となり、民生委員や社協と情報を共有。新聞の配達員やガスの検針員らとも連携し、非常時に迅速に高齢者を助けることを目的としている。

 見守りネットワークでは、一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯に記入してもらった「要みまもり者カード」を元に、「みまもり員」を選任。市内各地区の社協(全16社協)ごとに、要みまもり者やみまもり員、市の連絡員の連絡先が書かれた台帳を作製する。

 みまもり員は、主に要みまもり者の「ご近所さん」にお願いし、昨年6月時点で1115人いる。要みまもり者とみまもり員には互いの連絡先が書かれたカードを配り、緊急時に連絡が取り合えるよう工夫している。

 ほかに、牛乳や新聞の配達員や水道の検針員、要みまもり者の行きつけの美容院などにも協力を依頼。新聞や牛乳がたまっていたり、何日も顔を見なかったりした場合は、社協に連絡をもらう態勢も整えた。

 見守りネットワークは、旧宇奈月町であったお年寄りの孤独死をきっかけに、1993年から始まった。2006年の旧黒部市との合併で社協も統一されたため、対象を黒部市全域に拡大。高齢者世帯に連絡員を設ける市の事業と組み合わせ、市との連携も強めた。

 旧宇奈月町の社協では、高齢者ら災害弱者世帯を、地図上で把握するシステムも99年3月から運用した。災害時に援助が必要な人の名前や住所、電話番号から、自宅を地図上で調べられ、緊急連絡先なども表示される。昨年2月には市全域の入力作業(対象者5192人)が終了し、データも更新できたという。

 市社協で今年1月30日に開かれた研修会には市民約100人が参加して意見交換した。みまもり員らが「こちらが良かれと思ってやっても、押しつけにならないか」「男のみまもり員は女性の家に行きにくい」などといった疑問や不安を出し合った。

 各地区の自治振興会長らも出席。「なじみの自治振興会の役員が一緒に行くことも必要」「近所同士で声を掛け合い、相談することも大事」などの声も出た。
 市社協の小倉博和・地域福祉係長は「東日本大震災を機に、改めて地域のつながりの大切さが注目されている」と指摘。「地域全体で支え合うには、市民の協力が欠かせない。そのためにも、より多くの人に見守りネットワークを知ってもらいたい」と話している。
(井上潜)