「見守り事業」障害者届かず 23区 多くが高齢者中心
2012年02月23日 東京新聞
東京都立川市のマンションで死後二カ月の母親(45)と知的障害のある息子(4つ)とみられる遺体が見つかった問題は、区部の自治体にも大きな衝撃を与えた。都会の片隅で人知れず亡くなる「孤立死」対策の見守り事業は高齢者が中心で、障害児家庭をほとんど想定していないためだ。
地域の見守り役となる民生委員の訪問や見回りでは、積極的に状態を把握する対象に障害者を含めない区が多い。豊島区の担当者は「今も家族が障害を隠そうとするケースが多い」と、対応が難しい現状を明かす。
衰弱して遺体で見つかった立川市の幼児は幼稚園や保育園などに通わず、公共サービスを受けていなかった。これが「盲点」になったとの指摘もある。
江東区障害者支援課は「就学前の療育などのサービスでつながっていれば、欠席などで異変が分かるが、今回のような親子の家庭は把握が困難」。豊島区の担当者も「重度の障害の訪問看護などを受けている人の場合、異変に気づくことができるが、サービスを受けていない場合は難しい」と話す。
高齢者や障害者の見守りで先駆的な取り組みをしているのが中野区だ。
町会などに個人情報を提供する「地域支えあい活動推進条例」を施行。情報管理を徹底した上で、昨年11月から名簿の提供を始めている。見守りで「声を掛けやすくなった」と効果が出始めているが、取り組みは緒についたばかりだ。
独居の高齢者に限れば、各自治体で見守りの仕組みづくりが進んでいる。
板橋区では、区と警察、消防、民生委員が70歳以上の希望者の緊急連絡先などを共有する「見守りネットワーク」を10年以上前から実施。「ひっそりと匿名性を持って生きている高齢者が多い大都会特有の課題。地域の民生委員がさりげなく見守る仕組み」(おとしより保健福祉センター)で、5千人超が登録している