独居死を防げ ボタンひとつで緊急通報 / 宮城・大船渡

2012年02月09日 朝日新聞

 東日本大震災で仮設住宅に入居した高齢者の孤独死を防ごうと、大船渡市が携帯電話型の緊急通報サービスを始めた。固定電話型は以前からあるが、仮設住宅で電話線を引く例がほとんどないうえ、常に持ち運べることから携帯電話型が選ばれた。被災者の費用負担はゼロで、宮城県岩沼市も導入している。

 この携帯電話機には大きめのボタンがひとつ。利用者が押すと、市から業務委託を受けた緊急通報サービス会社「安全センター」(本社・東京都)につながり、看護師と通話できる。同社が、ソフトバンクの「みまもりケータイ」を利用して始めた。

 看護師は24時間対応で、緊急の場合は救急車を呼ぶ。センター側は事前登録で本人の投薬状況も把握している。ボタンを押したものの、痛みなどで話せなくても、どこからの通報かが分かる仕組みで、近くに住む協力者に急報して様子を見に行ってもらう。

 緊急時以外も、高齢者は携帯を通じて体調について相談でき、センターも週に1回、高齢者に電話連絡する。独り暮らしが長引く高齢者にとっては、誰とも話さない状況が続くのが危険とされており、自治体の見守り活動の隙間を埋めることが期待されている。

 昨年末にサービスを開始した大船渡市ではすでに十数人が利用しており、先々は100人規模の配布を検討しているという。

 東北の被災3県の県警によると、仮設住宅で亡くなった独り暮らしの被災者は、岩手で6人(1日現在)、宮城で8人(昨年末現在)、福島で4人(1月27日現在)。大船渡市では1月下旬、大学職員寮に入居していた60代の被災男性が、死後数日たって発見されたケースもあった。

 同市保健介護センターの担当者は「今後、自力で移転先を見つけた比較的元気な入居者が仮設住宅を出ていくことも想定される。それに伴い、仮設住宅では独居高齢者の割合が高まることも考えられるので、対策が必要と考えた」と話している。