出会い求め高齢者も婚活

2012年01月10日 読売新聞

孤独、年金不安が後押し


 婚活は、いまや若い人だけのものではない。長寿化に加え、年金や一人暮らしへの不安を背景に、高齢層向け婚活パーティーは、出会いを求める男女であふれる。ただし、愛し合う二人の行く手には、高齢者ならではのハードルもあるようだ。

60代の新婚旅行


 別府から天草、韓国・釜山プサンへ、昨年末に2週間のハネムーンへ行ったばかり。香川県に住む新婚夫婦は、夫62歳、妻69歳だ。

 ともに前の配偶者と死別。「一人で外食する気にも旅行する気にもならず寂しかった」と夫は言う。結婚相談大手「ツヴァイ」(東京・千代田区)の紹介で昨年1月に知り合い、すぐに同居した。今は年金などで暮らす。「キャンピングカーを買って一緒に全国を巡りたい」というのが妻の夢だ。

 ツヴァイの会員約3万6000人のうち、男性の13%、女性の4%が50歳以上で、その数は10年間で2.4倍に。昨年、50歳以上限定の新コース「ビギンズ パートナー」を設け、個別の相手選びのほか、カラオケや薬膳パーティーなど婚活の場を提供している。

 2010年の国勢調査では、65歳以上の高齢者のうち一人暮らしの割合は15.6%。一人の寂しさ、年金不安や孤独死などへの心配から、高齢の男女が終ついのパートナーを求める傾向が、ここ数年、強くなっているようだ。

 「横浜市から来た○○です。趣味は音楽鑑賞です」。汗だくで自己紹介する男性。気に入った男性の名をメモする女性。昨年のクリスマスイブ。新宿のホテルに、出会いを求める40~80歳代、約120人の男女が集った。中高年結婚相談の「茜会あかねかい」(東京・新宿区)が開いたパーティーだ。2年半前に夫を亡くした女性(63)は「孤独です。息子と住んでいますが、それでは埋められない」と明かす。一昨年9月に離婚した男性(64)は「元妻とはけんかばかり。笑顔のある家庭が欲しい」。東日本大震災後、独身女性に結婚願望が広がったといわれるが、同会でも、入会者数が前年比4~5割増しになった。

様々なハードル

 ただし、高齢者の婚活には、若者とは違うハードルがある。第一は子どもの理解だ。50歳(女性は45歳)から最高93歳までの会員にお見合いの場を提供する「アイシニア」(東京・新宿区)代表の池田淳一さんは、「お子さんが結婚に賛成しない、とくに父の再婚に娘が反対するケースが多い」と話す。

 次に相続問題。配偶者は新たな相続人となる。相続権のある家族、親族が納得しないことがあり、婚姻届を出さない事実婚のカップルも多い。また、女性が夫の遺族年金を受給している場合、事実婚も含め再婚するともらえなくなる。そうした事情から別居を選ぶケースなどゴールの形は様々だ。

 男女の意識の違いもある。「男性は、家事が得意な家庭的な女性を望む傾向が強いが、女性は、旅行やデートを一緒に楽しめる相手を求める」と池田さん。女性には、相手に経済力を求める人も多い。男女とも重視するのは健康で、交際前に健康診断の結果を交換することもある。過去に介護を経験した人もいるから切実だ。

 将来に夢を抱く若者の結婚と異なり、高齢者の場合は、10年、20年を楽しく安心して暮らすことが優先される。そのために何を心がければいいのか。「東京家族ラボ」(東京・新宿区)を主宰する池内ひろ美さんは「長年の結婚観、思い込みを捨てること」だと言う。年を増すにつれ頑固になるのはお互いさま。相手を変えるのではなく、自ら歩み寄って折り合いをつけるのが円満の秘訣ひけつだ。再婚の場合の鉄則は、「前と比べないこと」なのだそうだ。(梅崎正直)