【回顧2011】高齢者 「見守り」民間参入相次ぐ
2011年12月30日 読売新聞
今年7月、発表された国民生活基礎調査(2010年)では、65歳以上の独居世帯数が初めて500万を超えた。民間企業が相次いで見守りビジネスに乗り出し、自治体も買い物支援などに取り組み始めている。独り暮らしの高齢者をどう支えていくか、考えさせられる1年となった。
東京・世田谷区の戸建て住宅で独り暮らしをする女性(78)は、この夏、警備会社「東急セキュリティ」の高齢者見守りサービスに加入した。
室内にセンサーを設置。一定時間、家の中で動かないでいると「急病などの可能性がある」と警備員が安否確認に駆けつけてくれる。家具の移動やエアコンの掃除といった日常の困りごとへの対応もメニューに含まれており、この女性は早速、庭の草取りを依頼した。「子どもに頼らないで独り暮らしをするのに欠かせないサービス」と話す。同社の見守りサービスの加入世帯は、この1年で倍増した。
セコムも今夏、家事支援サービスを来春から強化すると発表した。住宅設備会社と提携し、自宅の修繕や、手すりなどを付けるバリアフリー工事にも対応する。
携帯電話を使った見守りサービスも登場した。NTTドコモは4月、携帯電話の利用状況(携帯電話を開閉した回数、内蔵されている歩数計の歩数など)を指定した相手へ知らせるサービスを始めた。独り暮らしの高齢者の状況を、離れて住む家族や友人が知ることができる。今月15日からは、神奈川県座間市の社会福祉協議会が、このサービスを活用した高齢者の見守り実証実験を始めた。
民間企業の参入が相次ぐ見守りサービスだが、介護保険など公的なサービスの対象外になることが多かった。
財政難の自治体に負担をかけずに制度の隙間を埋められるよう、国は、地域のNPO法人などと連携して高齢者らの見守り・買い物支援などを行うモデル事業を2年前に始めた。参加したのは全国58自治体。買い物に同行したり、食材宅配時の安否確認に取り組んだりしてきた。3か年のモデル事業は、今年度末で終わる。新年度以降、行政と地域が一体となってどんな取り組みを継続していくか、各地域で検討されている段階だ。
高齢者の生活支援に詳しい信川益明・日本健康科学学会理事長は、「サービスを必要とする人が誰でも利用できるようにすることが必要。行政や企業、町内会など地域に関わる人たちが知恵を出してサービスを作っていくことが大切だ」と指摘する。