思いつなぐ遺品整理士 全国2人目の資格取得…広島

2011年12月26日 読売新聞

物に宿った心大切に

 故人の遺品を整理する「遺品整理士」の資格を、広島市安佐北区のリサイクル店経営伊達憲司さん(60)が中国地方で初めて取得した。全国2人目ともいい、無縁社会や高齢者の孤独死が社会問題化する中、「亡くなった人の思い」をつなぐ仕事の必要性が高まっている。(川上大介)

 尾道市出身。大学卒業後、約20年間、大手スーパーで働いた。退職後の1997年6月、安佐北区で中古自転車の専門店を開業。家電や日用雑貨まで取り扱い、2004年には引っ越しの片付けやごみ処理を引き受けるようになった。その頃から遺品整理の仕事も舞い込むようになった。

 遺品整理を担当するのは、主に運送業や不動産業、産業廃棄業者などだった。しかし、「ほとんどの業者が、廃棄物として扱っていた」と感じられた。遺品には人の思いが詰まっていて簡単には捨てられない。「遺志をつないで、新しい持ち主が喜ぶ可能性があるなら、探したい」と自身の仕事と考えた。これまでのノウハウを生かし、買い取って販売したり、古物商や専門業者を頼ったりした。

 たまたまダイレクトメールで遺品整理士の通信講座を見つけ、11月初旬に応募した。「少子高齢化が進み、仕事はさらに増えるはず。これまでの経験も整理したい」と思ったからだ。1日平均2~3時間、勉強して今月2日、合格を果たした。法律の知識や作業手順などが、効率よくまとまった。

 現在、遺品整理は月3回のペースで請け負う。今月上旬、広島市中区の住宅で、60歳代の男性の身の回り品を整理した。あまり使用されていないゴルフバッグの中にドライバーとアイアンがあった。「退職後、好きだったゴルフをやろうと買いそろえていたのだろう」と推し量った。自身も同年代でゴルフ好き。男性の気持ちがよくわかり、「思いを引き継ぎたい」と買い取って使うことにした。

 この仕事は「儲(もう)かるか、儲からないではない。亡くなった人や依頼主の気持ちをいかに理解し、大切にできるかが重要だ。それができれば、自分自身の心も救われたような気になる」と話した。

 問い合わせは、伊達さん(082・812・0553)。

遺品整理士

 遺品整理の需要の高まりを背景に、業者間で基準を設けようと、北海道内のリサイクル業者などが9月、社団法人「遺品整理士認定協会」(北海道千歳市)を設立。業務の知識や法規制を正しく理解した遺品整理士の養成を始める。テキストやDVDで作業手順や遺族への接し方、関連法律を学びリポートを提出。一定水準の得点を取ると認定される。