独居、孤独死…老後に不安 「生前契約」高まる関心

2011年12月06日 神戸新聞

 契約に基づき、生前の暮らしのサポートから、葬儀や埋葬、死後の不用品の処分、墓の管理まで代行する生前契約。国内で始まった約10年前に大きな注目を集めたが、エンディングノートなど“終活ブーム”を背景に、再び生前契約への関心が高まっている。背景には470万人とされる独居高齢者の不安感もあるようだ。(黒川裕生)

 生前契約に対応する事業者としては、草分けであるNPO法人りすシステム(本部・東京)が、NPO法人化前の1993年ごろから活動していた。提供するサービスに法律上の問題がないかどうか、契約通りに履行されているかを確認する仕組みがなかったため、死後の契約執行の監督や支払いにあたるNPO法人「日本生前契約等決済機構」(東京)が2000年に設立され、兵庫県内では、宝塚市のNPO法人が同機構が指定登録する関西初の事業者として活動を始め、反響を呼んだ。

 その後、このNPO法人が生前契約を中止したため、現在、関西で生前契約業務をしているのはNPO法人「りすシステム」西日本支部(TEL06・6363・2208)と、同「ほっとサポート」(TEL050・1166・7254)だけという。


 りすシステムは全国で約2300人、西日本支部では約300人と契約している。本部の担当者によると、昨年にNHKの「無縁社会」が話題になったのを機に、問い合わせが増えたという。現在も毎月20人ほど新規契約者が増えている。

 ほっとサポートは07年に発足したばかり。契約者もまだ10人程度だが、理事長の久保下多美子さん(58)は、宝塚市のNPO法人でスタッフとして生前契約を担っていたベテランだ。

 「亡くなった際、疎遠になっている親族には連絡しないでほしいという人もいる。生前のサービスで、ヘルパーやケアマネジャーへの要望を代わりに伝えてほしいという声も」

 ただ公正証書の作成など、実際に契約に至るには心理的なハードルが高い。ほっとサポートの事務局長加藤孝吉さん(50)は「死後の準備はしたいが、契約は大変だから取りあえず簡単なエンディングノートを書いておこうか、というのがこの10年の動き。独居や孤独死の問題は深刻。生前契約の必要性は今後さらに注目されるようになるはず」と見ている。

 りすシステムは申込金5万円。基本料金は生前業務が20万円、死後業務が50万円で、追加のサポートを受ける場合は別途料金。ほっとサポートは入会金5万円、年会費1万2千円。35万円で生前、死後の基本サポートをするが、追加の場合は別料金がかかる。