高齢者見守りに赤外線活用 稲美町の企業開発/兵庫

2011年11月16日 神戸新聞

 交通管制など監視盤製造の鈍渡(どんど)技研電子工業(兵庫県稲美町)は、高齢者の見守りや防犯センサーになる生体赤外線監視装置「アンシーン」を開発した。部屋で人の体温を検知し、遠方の家族などに検知回数をメールで知らせる仕組み。見守りサービスは大手警備会社などが参入する激戦市場だが、鈍渡喜一郎社長(62)は「価格や手軽さで勝負したい」と販路開拓に力を入れている。(広岡磨璃)


 1人暮らしの鈍渡さんが、遠方の子どもと独居死について話し合ったのがきっかけ。試作品を自宅で使用して手応えを感じ、昨年8月に兵庫県の経営革新計画で承認を受けて開発を進め、今年6月から販売を始めた。

 アンシーンは高さ68センチでセンサー部分を取り外すことができる。生体温度を検出する赤外線センサーを上下2カ所配置してペットによる誤作動を防ぎ、約4m先までの体温を検出する。非常時のコールボタンや、受信側からの状況の問い合わせにも対応する。また、生体を検知すると警報音を鳴らし、メールを送信する警備モードもある。

 高齢者の安否確認サービスは大手の参入が相次いでいるが、ネット回線の敷設や冷蔵庫など特定の家電が必要なケースがある。アンシーンは工事不要で、家庭用電源で使用可能なのが特長。

 個人客を中心に既に五十数台を販売。多数の装置を集中管理するソフトも開発し、警備会社や、民生委員不足に悩む自治体への提案も図る。年1千台の販売を目指す。

 同社は1971年創業し、上下水道の処理状況や道路管制などの監視盤を製造。公共投資の抑制などで本業は苦戦しており、鈍渡さんは「支援機関の応援もいただいており、アンシーンを事業の新たな柱に育てたい」と話している。

 アンシーンは本体4万9875円、月額サービス料2940円。