高齢者の安否見守る 広がり見せる 民間サービス

2011年10月27日 東京新聞

 独り暮らしの高齢者が増える中、情報機器を活用して、高齢者の安否を見守る民間サービスが広がっている。家電製品の利用状況や室内のセンサーで高齢者の異変を察知したり、異常時にボタン一つで看護師らにつながったりと、内容はさまざまだ。 (佐橋大)

 孤独死防止に取り組むNPO法人「人と人をつなぐ会」(東京)は昨年、東京都新宿区の戸山団地で、団地や近隣の高齢者向けに「見守りケータイサービス」を導入した。住民の約半数は65歳以上だ。

 民間の緊急通報システムと、ソフトバンクの高齢者向け携帯電話「かんたん携帯」を組み合わせた仕組み。折り畳み式の携帯電話を開くと、一日一回、子どもらにメールを自動送信。短縮ダイヤルボタンの一つを押すと、緊急通報システムのコールセンターにつながる。センターでは、看護師らが救急車の手配、公的機関への連絡などに対応。話し相手にもなる。

 ただ、導入後、申込者の半数以上が経済的な理由で携帯電話を購入できないことが判明。貸し出し方式に変更した。地元の診療所とも連携。定期的な訪問診療を受ければ、診療所がレンタル料を負担し、高齢者の負担が通話料だけになるようにした。その診療所が高齢者のかかりつけ医になり、緊急時にも駆けつけるという態勢だ。

 現在、対象地域を新宿区、練馬区の全域に広げ、1万人を目標に利用者を募集中。つなぐ会の本庄有由会長(73)は「現時点の利用者は40人。目立った効果はまだ出ていないが、近く貸与による利用が本格化すると、大きな力になるはず」と自信をのぞかせる。

地域の枠にとらわれず、個人契約で受けられるサービスもある。

緊急通報システム会社大手、安全センター(東京)の「お家(うち)でナースホン」は、体調急変時に通報ボタンを押すと、看護師のいるコールセンターに電話がつながるサービス。月に一度、オペレーターが高齢者宅に電話し、健康状態を確認する。

アートデータ(東京)の「安否確認サービス」は、ベッド下や冷蔵庫ドアに付けたセンサーが離床やドアの開閉を感知し、電話回線を経由してサーバーに情報を蓄積。「正午まで起きない」など普段と違う生活パターンが現れた場合に、家族らにメールを送信する。

こうしたシステムを個人で契約すると、利用料や機器のレンタル代などで月数千円以上かかることが多い。ほとんどの自治体では、企業と契約し、住民向けに緊急通報装置などを無償や安価で貸与している。条件は「独り暮らしで身体虚弱」というところが多い。関心があれば、自治体に問い合わせてみるといい。



2011年版の「高齢社会白書」によると、10年の独り暮らしの高齢者は465万人。30年には700万人以上になる見通しだ。孤独死のリスクが高い高齢者の独り暮らしの増加が、見守りサービスの拡大につながっている。民間研究機関・矢野経済研究所によると、高齢者向けの見守りサービスは、00年前後に普及し始め、市場は拡大傾向。10年の市場規模は、利用者の金額ベースで118億円と推測する。

独り暮らしの高齢者の生活に便利な情報をまとめた「おひとりさまの終活」の著者、中沢まゆみさん(62)は「緊急時にスタッフが駆けつけると、一万円近くの追加料金が発生することもある」として、まずはサービス内容をよく知ることが第一歩と助言する。「困ったときに助け合える人のつながりを普段からつくっておくことも大切。元気なうちから、自分仕様の見守りネットをつくる心掛けを」と呼び掛ける。