独居の親 ITで見守る
2011年10月23日 読売新聞
独居や、日中だけ独りとなる高齢者が増える中、IT機器を活用した見守りサービスが注目されている。テレビなどの家電にセンサーを取り付け、使用時間を把握して、安否を気にかける家族らに電子メールで伝える。自治体を通じた導入が目立つが、個人で契約できるものもある。(内田健司)
テレビで感知
山口県下松市に住むA子さん(74)は先月から、独居高齢者見守りシステムを利用している。自宅のテレビと電子レンジの電源コード部分に、家電の使用状況を検知するセンサーを取り付けてもらった。
テレビを付けていた時間や電子レンジを使った時間が、一緒に暮らしている会社員の娘(42)と、近くに住む自分の妹(70)の携帯電話に、メールで届く。毎日午前8時と午後9時の2回の定時連絡のほか、直近の利用から24時間以上センサーの反応がなかった場合は、緊急メールが届く仕組みだ。
A子さんは血圧が高めだが、健康に大きな心配はない。しかし、家の中でつまずいて転ぶことが多く、日中、独りの時に不安を感じていた。「ある程度元気なうちから安心を買うつもりで加入しました」と話す。
個人契約の場合、費用負担は初期費用2万1000円のほか、月ごとに4725円。これまでに緊急メールが送られたことはない。娘は「母の体調が気になっても、仕事ですぐに電話ができない時に便利。緊急メールは保険的な役割を果たしてくれる」と説明する。
システムを開発した周南マリコム(山口県周南市)の堀信明社長は「簡単に設置でき、機械の誤作動がない。設置したことを忘れるぐらい、自然に見守ることができる。安心と安全を届け、孤独死解消にも役立てたい」と意気込む。
同社のシステムを導入し、1世帯月300円で提供する自治体もある。鹿児島県曽於市は、今年5月から本格導入した。民生委員を通じて普及を図り、9月末で高齢の155世帯に設置した。毎日自然に安否確認ができるといい、離れて暮らす子どもたちも安心できる。
専用携帯電話
類似のシステムを使った事業者の参入も相次いでいる。NECは、家電のオン・オフに加え、冷蔵庫やトイレの扉の開閉状況をセンサーで検知し、やはりメールで通知する。利用者の生活行動リズムをコンピューターで解析し、普段、利用が多い時間帯に使われていなければ異常と判断し、緊急メールを送るのが特徴だ。
KDDIは、屋外でも見守りに利用できる専用の携帯電話を発売した。緊急ブザーや全地球測位システム(GPS)、歩数計機能も付いており、利用者の足取りを確認することもできる。
一方、認知症で徘徊が心配な人向けには、介護保険を利用して、1割の自己負担でレンタルできる見守り機器もある。東京で今月初めに開かれた国際福祉機器展に出展した事業者も目立った。
サッシ加工会社が設立したアイトシステム(京都府福知山市)の徘徊監視システムは、玄関のドアなどに取り付けた開閉センサーが作動すると、携帯電話にメールが届く仕組みだ。
地域の支援も
民間調査会社シード・プランニングによると、独居の親を持つ子供世代の68%が、見守りサービスの利用を検討したり、必要性を感じたりしているといい、市場規模も2010年度の約90億円から、20年度には132億円に成長する見込みだ。
見守りには、安全センター(東京都大田区)が提供するコールセンターを活用した緊急通報もあれば、新聞配達員など人による見守りもある。親を介護する人のための情報サイト「親ケア・com」管理人の横井孝治さんは「費用やサービス内容、操作の簡便さなどを見て事業者を選ぶといい。全てを機械任せにせず、地域包括支援センターなどに相談して、人による地域での見守りもあわせて考えるとよいのでは」と話している。
<見守りサービスの問い合わせ先など>
◆横浜市の企画会社が昨年12月に開設した高齢者安否確認比較.com(http://anpi-hikaku.com/)では、見守りサービスを提供している37社の事業内容を紹介。全国の1746自治体ごとの取り組みも確認できる。
◆中澤まゆみ著「おひとりさまの終活」(三省堂)では、「見守力は自分力」として、様々な安否確認サービスの特色や料金などを紹介している。
<各企業の見守り機器の名称と問い合わせ先>
■周南マリコム「みまもり姫」(0120・270・382)
■KDDI「Mi-Look(ミルック)」(0120・996・094)
■NEC「eみまもり」(03・3456・7288)
■アイトシステム「きずな」(0773・22・2789)
■安全センター「お家でナースホン」(0120・377・317)