高齢者SOS 24時間対応/山梨
2011年09月28日 読売新聞
「見守りセンター」始動
県内情報通信会社が昨年3月から開発を進めていた高齢者の通報システムが完成し、年内にも実用化に向けた実験的運用が始まる。一人暮らしの高齢者が携帯電話を使って異変を通報できる仕組みで、9月1日には、24時間体制で通報を受け付ける組織が設立された。高齢者を守る民間主導の取り組みが県内で動き出すことになる。
■屋外からも通報可能に
一人暮らしの高齢者を対象にした通報システムは、県内市町村が運用してきた「ふれあいペンダント」事業があり、県内で約4000人が利用している。同事業では、専用の固定電話とペンダント型の子機を無償で貸し出していた。子機のボタンを押すと、固定電話の回線を通じて管内の消防本部につながり、異変を知らせるが、屋内でしか使えない欠点があった。
そこで中央市の「システムインナカゴミ」など県内情報通信会社4社は、昨年4月から総務省から約5000万円の補助を受け、システム開発に着手。今年3月に完成した「ふれあい携帯」システムでは、携帯電話からの通報を一括して1台のコンピューターで受けられる。
コンピューター画面にはあらかじめ登録された通報者の持病やかかりつけ医、家族の連絡先などの情報が表示される。携帯電話は貸し出し制で、国内全社の端末を利用できる。短縮ダイヤルの事前登録などで、高齢者でも通報しやすくする。
■緊急性あれば消防通報
県内の各消防本部を対象に、県情報通信業協会が2009年に行ったアンケートによると、08年度に寄せられたふれあいペンダントからの通報3082件のうち、救急搬送が必要だったケースは1割程度の339件。残りの通報理由は「猫がボタンを踏んだ」「さみしかった」などだった。
ふれあい携帯では、通報を民間で受け付けて消防機関への負担を軽くしようと、同協会の有志6人が9月1日、NPO「山梨県安心安全見守りセンター」を甲府市中央に発足させた。担当者が24時間交代で待機し、通報に緊急性があれば消防本部へ通報し、困りごと相談などの場合は話し相手になる。
ふれあい携帯への移行第1段階として、ペンダントの通報先を県内全域で消防から見守りセンターに切り替える。将来的には、ペンダントと携帯を合わせて1万6000台程度の通報をセンターで集約する想定だ。
同NPOは現在、大月市など複数の自治体と、ふれあいペンダントの通報先の切り替えを交渉中。大月市との間では、同市が運用する約100台の通報先を同市消防本部からセンターに切り替える実証実験を、年内にも始めることで合意しているという。
県情報通信業協会の河澄修専務理事は「これから携帯電話を持つ世代が高齢化していくので、携帯での見守り活動はより効果的。そのためにはオール山梨の見守りシステムづくりが必須だ」と話している。