特集:安否確認「見守りサービス」の今 新たなライフライン

2011年09月19日 毎日新聞


 少子高齢化と同時に1人暮らしのお年寄りが増えている。東日本大震災の発生で、人との絆が問い直されるなか、お年寄りらの安否を確認できる「見守り」サービスは、離れて暮らす子どもら家族にとって心強い存在といえる。ガスの利用状況や行動の様子を携帯電話のセンサーで検知するなど「見守り」の内容はバラエティーに富んでおり、いざという時に備え、それぞれの生活シーンにあったサービスを選びたい。【熊谷泰】

◆KDDI(au)「Mi‐Look(ミルック)」
◇室内では人感センサー、屋外では歩数計機能も

 KDDI(au)は「敬老の日」を控えた9日、センサーによる「見守り」機能搭載の携帯電話「Mi-Look(ミルック)」を発売した。同梱(どうこん)の卓上ホルダーにセンサー機能を内蔵、1人暮らしのお年寄りらが居間などに置いたセンサーの前を通った回数をカウントし、事前登録した遠隔地に暮らす家族らにメールで自動送信する。

 携帯電話には歩数計の機能を搭載しており、歩数との組み合わせによって、お年寄りらの生活リズムを「見守り」、安否確認ができるという。「見守る」側は事前登録しておけば、最大9件までメールを受けられる。

 「見守り」だけではない。体調の悪化やけがなど、緊急時には携帯電話のストラップを引くと、ブザーが鳴って周囲に異常を知らせる。事前登録者にもメールを送信し、現在地を通報する。また、「見守られる」側が着信に気付かず、仮に応答しない場合でもスピーカーから音声が流れ、「見守る」側に様子を伝えられるという。

 「ミルック」の普及に取り組むKDDIコンバージェンス推進本部の村井義明市場開発部長は「複雑な操作などからケータイが苦手というお年寄りらに配慮を施しています」と「見守り」以外の機能をPR。家族を装って現金をだまし取る「おれおれ詐欺」など、電話による犯罪が後を絶たないなか、「ミルック」は着信20件、発信1件まで登録でき、登録外の電話番号からの着信を受け付けないという。

 価格は約3万円で、同社は「特別な料金プランを考えていない」(村井部長)とし、月額1095円からの従来の価格体系で新しいサービスの普及に取り組む考え。

 個人だけでなく、介護事業者や運送タクシーなど法人需要を獲得し、新たなライフラインとしての定着を視野に入れている。

 ◆東京ガス「みまも~る」
 ◇ガスの使用状況を照会、「消し忘れ」遠隔遮断も

 東京ガスの「みまも~る」は、1人暮らしのお年寄りらのガスの利用状況を携帯電話のeメールで、最大1日2回、離れて暮らす家族らに知らせ、「見守り」を支援するサービス。パソコンのホームページで過去1週間の使用状況の照会もでき、ガスの消し忘れに際しての自動通報や、遠隔遮断といったサービスを合わせて利用できる。

 加入料は5250円で、月額の利用料987円(いずれも税込み)。「見守り」対象エリアは東京のほぼ全域と神奈川、千葉、埼玉の一部など1都3県の同社供給エリアで、東京ガスの監視センターは通信機能付きのガスメーターを通じ、365日、24時間態勢でガスの利用状況を把握し、全国各地にデータを送信するという。

 02年にサービスを開始、現在の加入件数は268件に上る。加入者にアンケートした結果、最も多かった加入理由は「離れて暮らす心配が軽減できる」の約4割で、次いで「見守られる側に特別な意識が不要だから」とプライバシーの保持が挙げられたという。

 東京ガスステーション24は「みまも~る」を「見守られる方を監視するのではなく、あくまでも見守りサービスです。従来あるガスメーターを使っており、ガス屋という生活密着型の利点を生かし、加入件数を伸ばしたい」と意気込む。

◇親のこと気になる32% 東日本大震災後、一層意識

 「そろそろ親のこと…」をキーワードに親子のコミュニケーション促進や市場を喚起する「オヤノコトネット」は東日本大震災後、親の健康や安全に対する子どもの意識をインターネットで調査した。「震災後、一層、気にするようになった」と回答したのは32.0%に上り、親の「安否確認」で行動した実態が浮き彫りになったという。

 7月発表の調査は、親を持つ35歳から59歳までの「オヤノコト世代」の男女500人を対象に実施。性年代別で最も「一層、気にするようになった」と回答したのは40代女性で43.7%に達した。実際にとった行動のうち「安否確認」(78.18%)や「定期的な連絡」(27.27%)、「一緒に避難経路を確認」(17.27%)が上位に挙がった。

 昨年の親の「老い」への意識調査では「親の健康や安全について不安」が79.4%に上ったが、「既に対策をとっている」は16.6%にとどまったという。同社は震災をきっかけに、子どもの「オヤノコト世代」の意識変化から「安否確認などのサービスが伸びていく」と予測。一方で「親子関係は、それぞれ個別の背景を抱えており、利用者が『これなら本当に使っていい』と納得できるユーザー本位のサービスが求められる」と指摘する。

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◇その他、こんな見守りサービスも

商品・サービス名        提供          主な内容
みまもりほっとライン      象印マホービン     無線通信機を内蔵した電動ポット「i‐POT」の利用状況を最大三つのメールアドレスへ毎日お知らせ

みまもり口座(普通・定期)   スルガ銀行       ALSOKホームセキュリティと連携。住居侵入警報のお知らせの受信時に、自動的に預金口座をロック(東京都、神奈川県、静岡県在住のみ対象)

AQUOS City      シャープ        液晶テレビ「AQUOS」の電源を入れるとメールでお知らせ。また24時間、テレビの電源が入らないときにもお知らせメールを送信

おうちCO-OP見守りサービス コープかながわ、横浜市 宅配事業利用の65歳以上の1人暮らしの方などに対し、配送担当者が商品を配達する際に、緊急事態を発見した場合は事前に登録された連絡先へ通報(横浜市在住者のみ対象)