<セカンドらいふ>人感センサーで見守りサポート/横浜

2011年07月06日 東京新聞

 高齢者の「孤独死」が社会問題となる中、横浜市栄区の都市再生機構(UR)「公田(くでん)町団地」で、各住戸に設置した人感センサー(赤外線センサー)による安否確認システムが導入されて1年が経過した。住民の「目」と連動させ、手厚い見守りを展開している。 (杉戸祐子)

 「1時間に1回でも動きがあれば、グラフは白から青に変わる。白が長く続けば、異変が起きている可能性があるということ」。団地内の住民の交流拠点にある「安心センター」で、住民らでつくるNPO法人「お互いさまねっと公田町団地」専務理事の佐藤保司さん(64)は、パソコンの画面を示した。

 画面には、住戸別に2日分の時間軸(1時間ごと)があり、居室や玄関など室内の場所別に、動きの有無が白と青で示されていた。動きは、室内に取り付けた人感センサーで検知するほか、玄関ではドアの開閉、居室ではテレビリモコンの電波や、電灯のオン・オフからも検知できる。

 この“安否情報"は無線で安心センターに送られ、12時間以上動きがないと、画面表示と警報音で知らせる。パソコンはNPOのメンバーが月~土曜の日中、1日2回程度確認している。

 この団地に入居が始まったのは1964年。高齢化が進み、全約1100世帯(約2000人)のうち、65歳以上の世帯が四割で、うち3割は独り暮らしだ。2008年には孤独死が4件相次ぎ、危機感を強めた住民らが翌年、NPOを設立。民生委員ら12人が「支援員」となり、新聞の取り込み状況や、外出頻度の変化などから高齢者の見守りを行い、異常の早期発見に努めている。

 このシステムはURによる実証テストとして昨年7月に始まった。現在80戸が参加しているが、多くは高齢者の単身世帯だ。NPO専務理事の有友フユミさん(64)は「退院してきたばかりの人や、普段よく見かけるのに見ない人の画面は重点的に確認する」と話す。

 昨年12月、支援員から「独り暮らしの男性(78)を2日ほど見かけない」と連絡が入った。パソコンで確認すると、室内での動きが極端に少なく、居場所は特定の部屋に限られた状態。電話をかけたが、言葉が聞きとれなかった。佐藤さんらが駆けつけると、体調を崩して寝込んでおり、入院した。同様に異常がわかったケースが、1年間で5件あったという。

 独り暮らしの女性(81)は「いつ体調が悪くなるかわからない。動けなくなったとき、知らせが行くのは安心」。夫(90)と暮らす女性(82)も「夫婦でいても年をとったから心配。緊急事態に備えられてありがたい」と話す。

 システムを担当するUR都市機構技術研究所の鈴木康嗣さん(43)は「住民の見守りをサポートする仕組みとして有効ではないか」と分析。URは本年度中、この団地での対象を四百戸程度増やす。有友さんは「見守りの基本は近所付き合いや人のつながりだが、システムは私たちの助けになっている」と歓迎している。複眼的なサポートが高齢化する団地を支えている。