センサーで孤独死防げ、泉区の上飯田団地「見守り」補う/横浜

2011年06月20日 神奈川新聞

 単身高齢者が急増し、地域とのつながりの希薄化で孤独死の増加が懸念される中、横浜市営団地で最も高齢化が進む同市泉区の上飯田団地で、センサーを活用した単身高齢者の見守りが行われている。市内の他の団地では、住民主体で直接見守り訪問するところもある。しかし、同団地の場合、「高齢化率が高く見守る人自体が足りない」ため、同市が初のモデル事業としてセンサー設置費などを補助、昨年12月から実施している。

 「腐敗が進んだ遺体はとても遺族には見せられないし、やるせない」。モデル事業を機に発足したボランティア「上飯田団地見守り隊」の高嶋志禎さん(77)はそう語る。

 1966年に入居が始まった同団地は、1345世帯が居住。65歳以上の高齢者は全住民の約52%にあたる1121人で、一人暮らしの高齢者は558人に上る。高嶋さんによると、孤独死が年間3、4件ほどあり、80代の男性が心筋梗塞で急死後、1週間たってから発見されたケースもあったという。

 モデル事業は、一人暮らしの10世帯が対象。玄関や居間など室内3カ所に、人の動きに反応するセンサーを設置し、午前4時から同9時までの間にセンサーが感知しなければ、管理会社を通してボランティアに連絡が入る。

 2010年度から実態調査を始めた県によると、県営223団地で孤独死は毎年60件前後あり、孤独死を身近な問題として感じている県営団地の住民も6割を超えている。

 各団地では現在、住民同士の「共助」の取り組みも進む。市営勝田団地(都筑区)などで住民が主体となって、直接訪問する見守り活動が行われている。

 だが、こうした団地の高齢化率は30~40%。市営団地約300カ所で最も高齢化率が高い上飯田団地とは事情が異なる。「見守りをできる人が限られるのが現状」(泉区高齢支援課)で、行政の支援は不可欠という。

 事業で自室にセンサーを設置した女性(80)は「腎臓の病気で退院したばかり。急に動けなくなるのではないかと不安に思っており、心強い」。事業は本年度いっぱいだが、同課は「住民による見守りが難しい地区で、行政はどのような支援ができるのか、探っていきたい」と話す。