高齢で独居 万一の備え

2011年05月26日 読売新聞

 高齢者の単身世帯が増える中、多くの人が緊急時のことを不安に思っています。体調の悪い時や今度の震災のような非常時に、助けてくれる人がいないのは心配です。日頃からできる対策はあるのでしょうか。

見守り装置、助け合う仲間

 「何かあった時も誰かが来てくれる。そう思うとすごく安心しました」

 東京都板橋区の都営住宅に住む小林リヨさん(84)は昨年5月、東京都の関連団体「都防災・建築まちづくりセンター」が提供する見守りサービスに加入した。自宅に設置したセンサーが小林さんの動きを感知する。約20時間動きがなければ、受信センターが安否確認のための要員派遣の手配をする。

 体調が悪くなった時などは、緊急ボタンを押せば受信センターに助けを求めることもできる。緊急通報装置で相談することもできる。

 見守りサービスは都内在住者が対象で、年間契約料5万3300円。「不安の大きさに比べれば高くない」と小林さんは言う。「都内に娘がいるが、仕事や子育てで忙しく、いつも来られるわけではない。孤独死する人も多いなか、心強いです」

 遠くに住む家族が携帯電話などを使って高齢者を見守ることができるシステムも登場している。象印マホービン(大阪)は無線通信機を内蔵した電気ポットで、「給湯」「外出」などの利用状況を家族へメール送信するサービスを行っている。ポットの保証金5250円、月額利用料は3150円。約4000人が使っている。ガスの利用状況をメールで知らせる東京ガスのサービス「みまも~る」もある。警備会社なども安否確認サービスを提供している。

 「でも、緊急時に大事なのは心配してくれる人が近くにいること」と言うのは、シングル女性を応援するNPO法人「SSS(スリーエス)ネットワーク」代表の松原惇子さんだ。

 同法人は5年前、会員が災害時に助け合う「災害ネット」を発足させた。住居が近い5人ほどでグループを作り、日頃の交流を通して緊急時の安否確認の方法を決めている。参加者は200人ほどだが東日本大震災で効果を発揮したという。

 同ネットの仲間が携帯メールなどですぐに連絡を取り合い、「気にかけてくれる人がいてうれしかった」「停電で心細いなかホッとした」ときずなを確かめ合ったという。食料品やガソリンなど近隣の情報も交換し、「近くに住んでいないと助け合いは難しいとわかった」との感想も寄せられた。

 「日頃の付き合いは面倒という人もいたが、震災でつながりの大切さが確認できた。頼り合う関係を築けるのは人だけ」と松原さんは言う。

 福祉の街づくりの助言を行っている社団法人コミュニティネットワーク協会(東京)理事長の近山恵子さんも、「もし、一人暮らしに不安があるのなら、緊急時も助け合える関係を自ら作ることです」と話す。地域活動や退職者のグループ、健康教室など、年齢や趣味などで自分に似た仲間がいる場を探すことを勧める。

 「無理をしないで居続けられる所で仲間を作るのが第一歩。そこから新しいきずなを作っていってください」

 
【一人暮らしの緊急時対策】
自治体や企業の見守りサービスを活用する
・市区町村や町会などで高齢者の見守りサービスを行う所がある。登録が必要な場合もある。問い合わせてみよう
・警備会社の緊急通報サービスや携帯電話・パソコンを使った見守りシステムなど、企業の有料サービスもある
NPOや地域活動などを通して助け合いのネットワークを作る
・趣味や価値観が似た仲間を探して、4~8人で連絡を取り合う関係を作る
・普段から月1、2回ほど集まって交流を深め、緊急時の連絡方法を確認しておく
・勤め人なら職場での縁を発展させる方法もある
(松原さん、近山さんらの話から)