孤立死する高齢者「年間1万5千人超」- ニッセイ基礎研究所が推計

2011年05月06日 CBnews

 65歳以上の高齢者で、誰にもみとられずに死んでいく人は年間1万5000人を超える-。ニッセイ基礎研究所はこのほど、孤立死する高齢者の年間推計数をまとめた。推計によると、孤立死を「死後4日以上経過して発見された人」と定めた場合、その数は1万5600人を超える可能性があるという。また、孤立死した事例の中には、生前に「セルフ・ネグレクト」(自己放任)状態にあったと考えられる人が約8割含まれていたことも明らかになった。

 同研究所では、誰にもみとられず、自宅で死亡する高齢者の増加が問題視される一方、「全国で実際どのくらいの人が孤立死しているのか、その数字すら明らかになっていない」(井上智紀研究員)点に注目。孤立死について、虐待や孤立などの専門家を集めた委員会での議論を経て、「自宅にて死亡し、死後発見までに一定期間経過している人」と定義した上で、「東京都23 区における孤独死の発生数」(東京都監察医務院、2009年時点)と「人口動態統計」(厚生労働省、2010年版)を用い、東京23 区における性・年齢階級別の高齢者孤立死の発生確率を算出した。さらに、その発生確率と全国市区町村の性・年齢階級別死亡数を基に、65歳以上の孤立死数の推計数を市区町村ごとに導き出し、合算した。

 推計の結果、孤立死を「死後4日以上経過して発見された人」と定めた場合、その数は1万5603人(男性は1万622人、女性は4981人)となった。さらに、発見されるタイミングを「死後2日以上」と区切って推計した場合、その数は2万6821人(男性は1万6616人、女性は1万204人)に達した。発見されるタイミングを「死後8日以上」と設定した場合は、8604人(男性6311人、女性2293人)だった。

 廣渡健司主任研究員は、「今回示した数字は東京都の発生確率を基に推計した数字だが、各自治体が高齢者の孤立死の実態を把握し、対策を練る上での参考値にはなる」と話している。

■孤立死の8割がセルフ・ネグレクト状態

 また同研究所では、各自治体の地域包括支援センターと生活保護課が把握している孤立死と思われる1068件の事例の情報を収集。このうち、「自宅にて死亡し、死後発見までに一定期間経過している人」という定義に合致する765件について分析した。その結果、「セルフ・ネグレクト」(飲食や最低限の衛生状態の保持、金銭の管理などをやろうとしないか、する能力がないため、安全や健康がおびやかされる状態)に該当していた人は約8割(609件)に達した。調査・分析を担当した山梨恵子研究員は「セルフ・ネグレクトは孤立死に至るリスクを負った状態であるといえる。こうした状況に対応するためにも、セルフ・ネグレクトを高齢者虐待防止法上で虐待と位置付けるなどの対応が必要なのではないか」と話している。