ネットで高齢者見守り 事業者や家族が携帯メールで情報共有 熊本市のNPO

2011年04月16日 熊本日日新聞

 熊本市のNPO法人「熊本まちづくり」(会長・丸山定巳熊本大名誉教授)が、介護事業者や地域のボランティア、家族らが高齢者の見守り情報をインターネットで共有できるシステム「ひご優ネット」を開発した。同NPOは、地域で高齢者を支えるため活用してほしいとしている。(山口尚久)


 介護や見守り活動を効果的に進めるためには情報共有が必要だが、「行政や事業所の組織ごとに対応はバラバラ。個人情報保護のハードルも高い」とNPO事務局長で西日本測量設計社長の山下定男さん(59)。

 総務省の地域ICT利活用広域連携事業で約3600万円の委託金を受け、昨年から開発した。
 同システムを利用するには、介護を受ける(見守られる)側と介護する(見守る)側がそれぞれ、個人情報の利用などについて理解した上で同NPOに申し込む。

 ヘルパーは食事介護や洗濯干しなど、提供したサービスについて、iPadなどの多機能端末や携帯電話でシステムに送信する。見守り活動をした住民は「会いました」「元気」などの項目を選択して送る。

 情報は「管理システム」に記録され、ケアマネジャーや家族にメールで報告される。ケアマネジャーらは必要な場合、医師など専門家に連絡する。

 現在、熊本市の居宅介護支援事業所「青い鳥」がヘルパーステーションなどと共同で機器を試用している。

 「1人の高齢者を複数の事業所で介護する場合もあり、いつでも状況を把握できるのはありがたい。電話連絡は聞き間違いもあるが、画面で確認でき正確な情報を伝達できる」とケアマネジャーで同事業所代表の真鍋幸子さん(57)。

 「ひご優ネット」は地理情報システム(GIS)も活用。どこで活動したかを記録するほか、災害時の安否や認知症の人が行方不明になった場合の所在も地図上で確認できるという。

 「ひご優ネット」のホームページ(http://portal.higoyou.net/)からは、熊本市などの福祉施設をまとめたマップや窓口一覧にアクセス可能。地域福祉のリーダー育成を目的に、サイト上で学べるeラーニング機能も持たせた。

 登録者の個人情報は、インターネットに接続していないパソコンで管理するなど、情報流出防止に配慮。機能の充実や介護現場などへの普及を目指している。

 山下さんは「都市部でも高齢化が進んで情報共有のニーズが高まっている。個人情報の利用について理解を得ながら、安全・安心に暮らせる地域づくりに貢献したい」と話す。同NPO事務局TEL096(234)9880。