高齢者支援を仕事に/大阪

2011年03月03日 読売新聞

 高齢者の住まいや生活に関する困り事への対応を仕事にするため、30~70歳代の失業者が、大阪市西区のNPO法人「街づくり支援協会」などが企画する講座で職業訓練に臨んでいる。今月末には半年間学んだ1期生26人が講座を修了する。「人生はまだ、やり直せる。もっと人の役に立つ仕事をしたい」というのが受講生の共通した思いだ。お年寄りの生活を助ける会社を設立しようと、起業を目指す人も出てきた。(辻田秀樹)

 2月下旬、大阪市中央区の同協会本町校ではパソコンの授業が行われていた。受講生たちは、表計算ソフトなどの使い方に加え、ホームページの作り方なども学ぶ。講師の指示に従ってキーボードをたたき、受講生同士で教え合う姿も見られる。

 受講生は週に4日、法律やパソコン、相談への対応の仕方などを学び、介護現場や高齢者住宅の見学なども行った。全体で600時間の講座の8割以上を受講すると修了でき、同協会の独自の資格「シニアハウジングアドバイザー(SHA)」が、認定委員会で認められれば得られる。

 受講生は、前職の経験を生かして社会の中で再チャレンジを目指す。大阪市浪速区の緒方珠久さん(37)は数年前までゲーム機の卸売りをしていたが、不況の影響もあり廃業した。「ゲーム機で遊べば、健康維持ができる」と話し、同市旭区の元ヘルパーの延山景子さん(50)も「訓練で学んだことと、介護の知識を合わせて、お年寄りを助けたい」と意気込む。2人とも起業に向けて準備を進めている。


 同協会は1995年の阪神大震災で県外に移り住んだ被災者らを支援。崩壊した地域コミュニティーで苦悩する高齢者らの援助も行った。この経験を生かし、高齢者の住まいや生活に関する相談を行うSHAの資格を創設した。

 2007年には同協会の理念を実現するための会社「ご近所センター」を設立。同協会メンバーの建築士や弁護士、税理士らが、さまざまなお年寄りの相談に対応し、見守りサービスや生活支援をしてきた。さらに同社専務で、同協会事務局長の中西光子さん(66)は「高齢者を援助する担い手をもっと増やしたい」と、失業した人たちを対象にSHAを学ぶ講座を昨年10月から開講した。

 国の緊急人材育成支援事業を活用。一定の要件を満たし、ハローワークで申し込めば、給付金(12万~10万円)を受けながら職業訓練を受けることができる制度で、講座は面接を行って絞り込みを行うほど申し込みが殺到した。

 中西さんは「高齢化社会が進むなか、孤独死や無縁死を防止する人材を今後も育てていきたい」と話している。


 同協会は2期目(4~9月)の受講生を募集している。8日まで。失業者30人が対象。テキスト代9300円が必要。問い合わせは同協会(06・6443・3808)へ。