仙台市営住宅、高齢化深刻 孤独死防げ 見守り急務

2011年02月27日 河北新報


 仙台市内の市営住宅で、高齢者の入居率が上昇している。お年寄りばかりの団地では住民のつながりが希薄になり、誰にもみとられずに「孤独死」したケースもある。市営住宅の現状は仙台が間もなく直面する「高齢社会」の縮図ともいえ、市は新年度、お年寄りの孤立を防ぐ見守りの在り方について本格的な検討に入る。

◎市、新年度から方策検討

 「若い人は出て行き、年寄りばかりが残る。このままでは住民の絆を守れない」。宮城野区の大型団地内の市営住宅に30年以上住む町内会長の男性(79)は、地域の将来への不安を隠さない。
 この団地が造成されたのは1970年ごろ。当時は世帯主が20、30代の若い家族が多く、公園には子どもたちの歓声が響いた。夏祭りは大勢の家族連れでにぎわい、団地は活気に満ちていた。

 40年がたち状況は激変した。子どもたちの多くは家を離れ、残ったのは親世代。高齢化率は過疎の集落並みの33.5%に達し、夏祭りに顔を出す住民も減った。

 それに伴い、お年寄りの孤独死が目立つようになった。2010年7月下旬、独り暮らしの女性(65)が死亡して9日後に室内で発見された。仙台市によると、同じ年にこの団地で孤独死した高齢者は3人に上った。
 町内会長は「孤独死する人ほど周囲との付き合いがなく、安否を確認しにくい。いざという時、すぐに駆け付けられる通報システムを早く構築してほしい」と求める。

 市市営住宅課によると、計30カ所ある市営住宅に入居する65歳以上の世帯主の割合は25.1%(10年4月現在)。05年に比べ5.7ポイント上昇した。高齢化率の最高は南鍛冶町(若林区)の59.5%。40%を超える団地も3カ所ある。

 市営住宅に入居するお年寄りは年金や生活保護で生計を立てるケースが多く、長く居住する傾向が強いという。

 市はこれまで、四郎丸、袋原、茂庭第一(いずれも太白区)の3カ所の市営住宅で、緊急通報システムを導入したバリアフリーのシルバーハウジング(高齢者住宅)として計70戸を整備した。生活援助員が巡回してきめ細かなケアを施すが、費用が掛かるため整備は限られる。
 市の高齢化率は10年の18.7%から、20年には25.6%に上昇する見通し。4人に1人が高齢者という市営住宅の現状が、市全体の課題となる。
 市は新年度、独り暮らしのお年寄りを見守る方策を検討する。行政の対応では限界があるため、NPOなど民間団体との連携も視野に入れる。市市営住宅課の村山光彦課長は「見守り活動を公的支援だけで担うことは難しく、民間と連携した共助のモデルを構築していきたい」と話している。