乳業大手、牛乳配達網で新サービス
米や菓子など販売 高齢者の安否確認 「きめ細かさ」で顧客開拓

2011年02月05日 日本経済新聞

 乳業大手が家庭への牛乳配達網を活用した商品販売やサービスを展開する。森永乳業は米などの販売や高齢者の安否確認を手掛け、明治乳業は近く明治製菓の菓子の取り扱いを始める。牛乳配達は最大手の明治乳業で全国に250万超の固定客を抱えており、各社は有力販路を生かして高齢者や共働き世帯向けの品ぞろえを増やし、顧客開拓にもつなげる。消費者も様々な商品を都合のよい日に届けてもらえるため、利便性が高まりそうだ。

 森永乳業は今春から、宮城県の契約農家から調達した高級米を牛乳配達用の保冷ボックスで届ける。初年度に1万世帯への販売を目指す。すでに自社生産の豆腐のほか、サプリメント(栄養補助食品)や家庭用防災品を配達しており、今後は産直野菜なども加える予定。盗難対策として、希望者には鍵付きの受け取り箱も提供。顧客の要望に応じて、販売店の従業員が配達・牛乳瓶の回収時に高齢者の安否を無料で確認したり、割安な人間ドックを紹介したりするサービスも始めた。

 明治乳業は同じ明治ホールディングス傘下である明治製菓の商品を扱う。牛乳類以外の商品を全国で配達するのは初めてで、第1弾は一部小売店でしか扱っていない輸入チョコレート。全国農業協同組合連合会系の協同乳業は、昨秋に資本提携したサッポロホールディングスの健康飲料などを今春から届ける。

 矢野経済研究所(東京)によると、食品を自宅に配達するサービスの市場規模は2010年度見込みで前年度比3.2%増の1兆6808億円と、高齢化や働く女性の増加で成長している。小売り各社もインターネットで注文を受けた食品などを配達する事業を強化しており、このネットスーパー市場は09年度に推定で500億円を超えた。

 牛乳配達市場は0.6%減の1041億円(10年度見込み)と、少子化の影響で微減が続く。ただ乳業大手の牛乳配達には数十年の歴史があり、明治乳業の顧客数は約255万世帯と、ネットスーパー最大手であるイトーヨーカ堂(会員約82万世帯)を大きく上回る。明治乳業の牛乳を含む配達商品全体の売上高は、10年3月期で433億円。約180万世帯に販売する森永乳業は247億円の売り上げがある。

 乳業各社が契約している牛乳の販売店は全国に約9000店。顧客は中高年や親子世帯が中心で、都市部の一人暮らしの高齢者も多い。販売店の従業員が家庭をほぼ毎日訪問するため、商品説明や安否確認などきめ細かなサービスを提供できる。ネットに不慣れな人も配達時などに牛乳以外の商品を手軽に注文でき、ネットスーパーのような配送料(一定額以下の購入だと支払う場合が多い)も不要。各社が品ぞろえやサービス強化に動くことで、消費者にとって活用の幅が広がる。