高齢者の孤独死:防止へ電話で安否確認 UR団地・九州支社が対策/福岡

2011年01月25日 毎日新聞

 超高齢社会に入り、深刻化する高齢者の孤独死。UR(都市再生機構)九州支社は孤独死対策として09年から福岡市城南区の荒江団地で高齢者に安否を尋ねる電話サービスを九州内で先行して始めた。10年からは北九州市の徳力団地でも始め、11年度は福岡市内の別の団地に導入を予定している。全国のUR団地で毎年増え続けている孤独死を防ぐ効果を上げられるか、担当者の試行錯誤が続いている。【三木陽介】

 荒江団地に一人で暮らす女性(70)の部屋のカレンダー。すべての木曜日に黒ペンで丸がつけてある。毎週、団地の生活支援アドバイザー、味園(みその)由美子さんから安否の確認電話がかかってくるからだ。味園さんとの会話は5分程度だが「おしゃべりできるのですごく楽しみ」と言う。

 この「安心コール」は09年1月、UR九州支社が「異変を察知できるように」と九州の団地で初めて導入した。対象は60歳以上の希望者。女性は「『もしも』の時、困る」と、すぐに申し込んだ。同居していた母親が7年前に亡くなってからは一人暮らし。血圧や心臓に持病があり、毎日薬が欠かせない。夜、布団の中で朝起きられるか不安に思うこともある。「もしも」の時は市内に住む妹に連絡がいくことになっている。


 荒江団地自治会によると、35棟に約2000人が暮らし、うち75歳以上の居住者は毎年約10人ずつ増えて約280人。その半分が一人暮らしで、孤独死も年間数件起きている。URによれば、全国のUR団地での65歳以上の孤独死は09年度が472件で10年前の5倍に増えた。

 味園さんは安心コール以外にも3カ月に1回、団地内の集会所で高齢者向けの講演会や絵手紙教室なども企画する。「こうした場をきっかけに高齢者同士の横のつながりができるのが理想」と期待する。

 一方、自治会も6年前から75歳以上の居住者宅を毎月1回訪問。味園さんや民生委員とも定期的に情報交換しながら見守り活動を続けている。

 ただ、こうした対策も万能ではない。近所付き合いを避け、自治会の訪問にもドア越しでやり取りする人が1割おり、安心コールの利用者は28人にとどまる。味園さんは「いざという時にこれで本当に助けられるのかと自問しているが、それを考えると何もできない。やれることをやっていくしかない」と話している。