民生委員はつらいよ 見る方も見られる方も高齢化/富山

2011年01月25日 朝日新聞

 民生委員・児童委員の定員充足率が100%と全国有数の優等生である県で、委員の高齢化や、なり手不足が課題になっている。県内ではお年寄りだけの世帯が増加の一途をたどるうえ、高齢者の所在不明問題で明らかとなった地域のつながりの希薄化も進む。住民の声に耳を傾け、行政サービスに橋渡しする「地域の見守り役」の役割が年々大きくなる中で迎えた曲がり角だ。

 24日、新たに着任した民生委員・児童委員向けの研修会が富山市内で開かれた。

 2010年度の県内の民生委員・児童委員の定員は2516人と、区画整理とサービス拡充のため、前回より7人増えて過去最大となった。この日の研修会には新任委員約700人が出席した。県厚生企画課・山崎俊光課長は「高齢者世帯が増え、児童虐待相談対応件数も高止まりの中、みなさんの役割が大きくなっています」と強調した。

 特に、お年寄りの一人暮らしを支える民生委員の重要性が高まる一方だ。県によると、1世帯あたりの人員は2.85人(09年)と3人を割り込む状態で、核家族化が進行。また、県内の高齢者世帯(高齢者単身世帯と高齢者夫婦世帯)は推定約7万1千世帯(2010年)と過去15年間で2倍以上に増加しており、今後も増え続ける見込みだ。

 「昨年は、受け持ちの地区で孤独死を2件見届けました」というのは富山市白銀町で民生委員を務めて28年目の菊川祐介さん(72)。4年前には、近くの用水路で高齢者女性の遺体がみつかったが、息子夫婦が両親と離れて暮らしていたため、数カ月も発覚しなかったケースもあったという。「そういうことがここ最近顕著。見守りは民生委員の役割とはいえ、毎日全員に訪問するのは時間的にも体力的にも限界がある」とこぼす。

 役割は増える一方で、後継者探しは年々難しくなってきている。全国でも3県しかないという定員充足率100%の富山県だが、舞台裏は厳しい。菊川さんによれば、昨年12月の改選に向けた準備会では、「推薦期限の9月末ぎりぎりまで見つからなかった地区もあった」という。民生委員の任期は3年間で、無報酬。今回任命された委員の平均年齢は58.9歳まで上がった。「雨どいを直してくれと言われたり、夜中にインターホンが鳴ったり、年中無休のなんでも屋。長期の旅行にも行けず、責任も重いので嫌がる人が多い」という。

 3年後の改選は、自身が市の定年規定の75歳を迎えるため、引き継いでくれる人を探しているが、菊川さんは「そのときになってみないと分からない」と言うしかない状況だ。(板垣麻衣子)