大手通信各社が安否確認サービス強化、高齢者の孤立化背景に

2010年12月27日 キャリアブレイン

 通信各社がテレビ電話や携帯電話を活用した高齢者の安否確認サービスを強化している。厚生労働省の調査によると、昨年の独居高齢者数は5年前と比べて約90万人増の463万1000人に上っており、独居高齢者の「孤独死」が社会問題化。
 
 また、国民生活センターの調査によると、悪質商法のトラブルに巻き込まれた高齢者の平均契約額は約643万円と深刻さを増している。こうした中で、月額数百円からなど比較的低コストで安否確認サービスが利用できることで、見守り活動の普及に一段の弾みがつく可能性がある。

■操作しやすさが重要

 NTT東日本と社会福祉法人「北海長正会」(北海道北広島市)は12月1日、北広島市の高齢者と札幌市のマンションの住人を対象に、IPテレビ電話機「フレッツフォン」を活用した安否確認サービスの実証実験を開始した。具体的には、北海長正会のオペレーターが、高齢者の安否確認や高齢者間のコミュニケーション支援を行っている。実証実験は来年3月下旬まで実施する。

 北海長正会の広報担当者は「テレビ電話で表情を確認し合えることで、利用者と家族の双方が安心を得られる。将来的にはバイタルチェックをできるようにするなど、機能を増やして、介護サービスの効率化と質向上につなげたい」としている。機械操作を苦手とする高齢者が多いとの懸念があることについては「パソコンなどと比べて圧倒的に使いやすい」としている。

 また、NTT東日本は11月25日、月額525円でタブレット型PCを貸し出すサービス「光iフレーム」を開始。米アップルがソフトバンクグループと組んで国内展開するタブレット型PC「iPad」のような機能やサービスを、固定通信回線を通じて家庭向けに提供するサービスで、NTT東日本は高齢者や主婦層などをターゲットにサービス展開している。

 NTT東日本ブロードバンドサービス部の中村浩アライアンス推進担当部長は、「今年度内にも高齢者向けサービスを次々と立ち上げる」としており、高齢者や認知症の人の見守りサービスなどを想定しているようだ。高齢者が独りで継続的に利用するのは難しい可能性もあるが、「将来的には、例えば月額500円の有料パソコンサポートのようなサービスを電話応対で提供したい」としている。

■ケータイやメールで確認も

 ソフトバンクモバイルは1月中旬をめどに、高齢者や子供、ペットなどの「見守り」に特化したサービス「みまもりシリーズ」の販売を開始する。まずは携帯電話経由で自宅の映像や音声を確認できる「みまもりカメラ」のサービスを開始。続いて携帯電話を操作できない人でも、ワンプッシュで簡単に居場所を知らせることなどができる「みまもりケータイ」を3月中旬をめどに発売する。

 8月には高齢者向けに折りたたみ式携帯電話の開閉時に、家族などに安否確認メールを自動的に送信するサービスを搭載した新機種を発売した。東京・戸山団地で見守り活動をするNPO法人「人と人をつなぐ会」などが「見守りケータイサービス」として新機種を活用した活動を展開している。

 NTTドコモも、高齢者向け携帯電話で安否確認サービスを提供している。高齢者向け携帯電話「らくらくホン シンプル」を充電した際に、その履歴を家族などに送信する仕組みだ。また昨年7月に開始した携帯電話やパソコンから写真を添付したメールを送信すると、デジタルフォトフレームに写真を表示する「お便りフォトサービス」は、相手がメールを開封したかどうかを確認でき、独居高齢者の安否確認にも活用できる。

 KDDIも「お便りフォトサービス」とほぼ同様のサービスである「PHOTO-U」を6月から展開し、メールの開封結果を送信者に知らせる「お届け確認メール機能」を提供している。

 見守りサービスは、導入するのに数万円や数十万円の費用が必要なものもある。通信インフラをベースに月額数百円で見守りサービスが利用できることで、利用者のすそ野拡大が期待できる。