民生委員:北九州市で、なり手不足 欠員分まで増える負担/福岡

2010年10月28日 毎日新聞

◇一人暮らしの高齢者見回り、100世帯超える

 3年に1度の改選期を12月に迎える民生委員が、北九州市では定数1530人より26人不足する。高齢者の安否確認が主な仕事だが、無報酬のボランティア。訪問を断られるなど仕事を取り巻く環境は厳しくなり、なり手を見つけるのは難しいという。欠員が出た場合、別の民生委員がカバーしているのが実情だ。【仙石恭】

 「いかがですか」

 民生委員の八幡西区熊西地区会長を務める三木俊雄さん(73)が同区青山の市営住宅を訪れると、一人暮らしの70代男性は「なんとか元気にやってます」と笑顔で答えた。民生委員歴16年。面会後、「顔のつやがいい。元気ですね」とほっとした表情を浮かべた。

 この市営住宅は、三木さんの担当地域ではない。熊西地区は小学校区を8人の民生委員で分担するが、死去や病気で3人の欠員が生じた。三木さんと別の女性委員(63)の2人でカバーしている。

 民生委員は主に65歳以上の一人暮らしの高齢者や生活保護受給世帯を巡回する見守り活動を無報酬で行っている。三木さんの担当地域は486世帯あり、うち対象となる独居の高齢者は100世帯を超える。女性の担当地域は254世帯で対象は約40世帯。これに加えて欠員分の世帯も回るのは大きな負担だ。

 2人は12月の改選を前に委員の充足を目指し、知人に何人も声を掛けた。だが、すべて断られ、「欠員2」は埋まらなかった。女性委員は「60代の知り合いぐらいにしか頼めない」と打ち明ける。仕事や子育てを抱える50代より若い世代が受け入れることはまずないという。

 北橋健治市長は27日、記者会見で「欠員が生じることは、非常に深刻な問題だ」と指摘。「訪ねて行っても会ってもらえないなど気苦労の負担が図りしれない」と業務の負担が背景との見方を示した。今後、欠員の充足策を庁内で研究。さらに市民や有識者を交えた研究会を設置し、検討するとした。

 厚生労働省によると、全国の民生委員の定数は23万2094人(09年3月末現在)で、約3500人の欠員が生じている。
〔北九州版〕