高齢者はいま…:つなげ地域の輪/下
鹿沼みまもり隊 /栃木

2010年10月17日 毎日新聞

子育て世代とも連帯を 月1の訪問と報告義務

 「今日はマッサージしてもらってきたの?」「そうそう、気持ち良かった」--。女性同士のおしゃべりは会話が弾む。鹿沼市の「鹿沼シニアライフみまもり隊」の訪問風景だ。

 隊員の根津チヨさん(61)は、同市幸町の野口尚志(81)、キミ(81)さん夫妻を月1回以上訪問する。野口さん夫妻は「毎回来てくれるのが楽しみ」とほほ笑む。
キミさんは足が不自由なため、外出はほとんどがデイサービスの時のみ。家にこもりがちなため、時折訪ねてくる根津さんから地域の情報を聞くのを楽しみにしている。

 昨年6月時点で鹿沼、大田原市など県内4市町だけだった見守り事業も、現在では取り組み中も含め、15市町に広がる。
鹿沼市では昨年12月、厚生労働省のモデル事業として年最大1000万円の補助を受け、市内5地区でスタート。今年11月には市内全域の17地区に拡大する。

 最大の特徴はボランティアでありながら、月1回以上の訪問と報告が義務付けられている点だ。隊員は自治会長の推薦で選ばれ、1人でおよそ10世帯前後を担当する。根津さんは9世帯を受け持ち、そのうちの8世帯が1人暮らしだという。
当初は警戒していた人も、徐々に「『見守りに来てくれてありがとう』と言ってくれるようになった」という。

 課題もある。市によると、隊員の平均年齢は62歳超。いわば高齢者が高齢者を見守っているのが現状だ。

 宇都宮大学教育学部の赤塚朋子教授(52)は「高齢者だけでなく、通学中の子供の見守りを行えば、隊員と子育て世代の親との日常的な出会いの場ができる。次第にお互いを気にかけるようになれば、姿が見えない場合は家をのぞくなど、自然な形の見守りにつながる可能性がある」と話す。

 持続可能な形で「みまもり隊」を浸透させることで、失われつつある地域の絆(きずな)をつなぎ留めることができるか。その役割への期待はますます大きくなっている。(この連載は松本晃が担当しました)