高齢者はいま…:つなげ地域の輪/中
孤独死の防止活動 /栃木

2010年10月15日 毎日新聞

どんな人でも供養をしてあげたい 施設入所や葬儀を支援
 群馬県館林市の源清寺住職、塚田一晃さん(44)は、「一人で寂しく亡くなっていく人をなくしたい」と“孤独死”を減らす活動に取り組んでいる。

 「どんな人でも供養してあげたい。お金がなくてもきちんとした葬式をしてあげたい」と95年、特定非営利活動法人(NPO)「三松会」を設立。
代表として世話をする家族や親族がおらず、独居生活の長い高齢者に施設入所を勧め、誰かにみとられる環境作りに力を注ぐ。

 自治体や病院などから依頼を受け、身寄りがなく孤独死した人々の葬儀や供養を執り行ってきた。16年間で挙げた葬儀は約1800回にも上る。うち6~7割が生活保護受給者で、遺体の引き取り手のない高齢者だった。
さらに4年ほど前、市から頼まれたことがきっかけで、1人暮らしの高齢者の身元引受人や、財産管理などの成年後見事業などに取り組み始めた。

 現在かかわる高齢者は約280人。群馬県はもとより、足利、佐野、茨城など活動範囲は広い。塚田さんによると、「お金のある人で身寄りがない人はほとんどいない」。身寄りがないと思われても、行政を通じて探せば親類は必ず見つかるという。
最初は「面倒を見ない」と言っていた親族が、本人が現金を持っていると分かった途端、手の平を返すように「引き取る」と言い出すケースもある。高齢者の所在不明問題の原因について「お金がないことが引き金になっているのでは」とみる。

 約3年前、塚田さんは借金で苦しむ年金受給者の無職男性(69)のケアハウス入所を手助けした。男性は未婚で、兄弟は3人いるが「経済的に厳しい」との理由で援助を断られた。リフォーム詐欺に遭い消費者金融に約600万円の借金があり、年金から月々の返済額を引くと生活費は月約1万円で食べるものにも困っていた。三松会が債権者に掛け合い、金利の減額をしてもらい施設入所できたという。

 「施設に入れるのは可哀そう」「家族が面倒を見るべきだ」といった声は依然根強い。これに対して塚田さんの答えは明快だ。

 「困っている人を助けるのがお寺の本来の仕事。施設の職員であっても誰かが死ぬ時にそばにいてくれれば、少しは心安らかに死ねるのではないか」