支え合い 日常から~マップ作製始まる 花巻・東和/岩手
2010年10月01日 岩手日日新聞
花巻市東町で、地域住民が日常生活の共助や災害支援などに使用する「住民支え合いマップ」の作製が始まった。県内モデル地区で2009年度から取り組まれており、同市では今回の東町が初めて。地元住民たちによる花巻の特徴を反映したマップ作製はより一層の住民福祉向上が期待でき、市内全域から注目を集めそうだ。
「住民支え合いマップ」の取り組みは、要援護者を一人暮らし高齢者に限定せず、地域での日常的な支え合い態勢づくりを進めるのが目的。地域の50~100世帯を目安とした小範囲の住宅地図に支援者と要支援者の情報を書き込み、住民全体で地域の福祉課題を共有する。県社会福祉協議会がマップ普及促進事業で、講師派遣を行っている。
書き込みは「除雪が困難」や「病弱で心配」など一軒ごと、具体的に記す。隣近所との付き合いや福祉サービス利用状況などを色分けするなどの工夫で、町内で孤立しがちな家や、災害時支援で優先すべき世帯などが掘り起こされる効果もある。
同市東町で9月28日夜に開かれた第1回学習会は、地域の民生委員ら男女9人が受講。二戸市社福協事務局長の小野寺幸司さんと葛巻町社福協の上野喜史さんを講師に、講義と作製体験でマップ作りの基本と狙いを学んだ。
講義で小野寺さんは、福祉課題の掘り起こしで必要な視点として▽住民に住み良いか▽より豊かな生活を送るためにはどうすべきか▽住民同士が助け合う環境があるか-の3点を基本に考えるようアドバイス。その上で「支援する、支援されるかどちらか一方になると、支援を受ける方が遠慮して拒んでしまう。本当に必要なサービスが届かなくなる。互いに見守り、見守られることで域内での役割ができ、それぞれの地域課題が見えてくる」と話し、マップ作りで念頭に置くべき「住民の支え合い・助け合い」の精神を強調した。
受講者たちは地域内の約200世帯を2グループに分け、赤や青、黄色といった各色で「一人暮らし」「高齢者世帯」などと色付け。作業の最中に「ちょっとこの人は分からないな」「でも週に1回は息子さんが訪ねているはず」など、地元ならではの情報交換も行われた。
同町民生委員の福岡秀子さん(65)は「支援してくれる人がいないところなどが目に見え、実際に書き込まないと分からないことに気付いた。地域でつながりを持ち、見守らなければいけない」と話し、作業で見えてきた地域課題を再確認。受講者同士で意見交換するなどして、マップの完成度と地域福祉力の向上を期していた。
学習会は10年度、さらに2回開かれる予定。