高齢者の見守り、機器を活用/東京

2010年09月29日 読売新聞

携帯、センサー 冷蔵庫に筒

 単身世帯が増え、住民同士のつながりも薄れるなか、様々な機器を活用するなどして地域の高齢者を見守っていこうという取り組みが増えている。各地で高齢者不明問題が発覚し、住民らの関心も高まっているようだ。

 東京都新宿区の都営戸山団地は、住民の半数程度を65歳以上の高齢者が占めるとみられる。「孤独死」も少なくないため、団地の住民らでつくるNPO法人「人と人をつなぐ会」は、今年4月から携帯電話を使った見守りサービスを導入している。

 高齢者らが折り畳み式携帯電話を開くと、1日1回、事前に登録された親族や知人にメールが届き、安否確認になる仕組みだ。緊急連絡用に設定したボタンを押すと、24時間体制のコールセンターにつながり、体調不良の場合、救急車を呼んでもらうこともできる。

 同会会長で、このサービスを利用する本庄有由さん(72)も独り暮らし。携帯電話を開くと、近くに住む知人のほか、同会事務所のパソコンに毎朝メールが送られるよう設定している。携帯電話の基本料金などに加え月に約1000円かかるが、「1日連絡がなければ、知人らが様子を見に来て安否を確かめられる。携帯を開くだけなので、高齢者でも慣れれば気軽に使えるのでは」と話す。

 都市再生機構(UR)は今年夏から、横浜市栄区の公田町団地で、単身高齢者らの自宅にセンサーを設置する実証実験を始めた。国土交通省の補助事業で、赤外線などが人間の動きを感知する仕組みだ。

 住人がドアを開けたり照明をつけたりすると、各居室や台所、玄関などに取り付けたセンサーが電波を発信。これを住民らで作るNPO法人「お互いさまねっと公田町団地」の事務所で受信し、12時間以上動きがなかった場合、スタッフが部屋を訪問することになっている。現在は10戸に取り付けられており、将来は対象を広げる予定。

 「住んでいる人が元気かどうか、素早く判断できる」と、同NPO法人理事長の大野省治さん(79)は歓迎しつつも、「機械だけでは高齢者の悩みなどはわからない。訪問による見守り活動と機械の力を組み合わせることが大切だ」と強調する。

 一方、ちょっとした工夫で、万一の際に備えようという取り組みもある。約200世帯が住む東京都江東区の都営亀戸9丁目アパートでは、自治会が昨年、単身高齢者らが住む約20戸を対象に「安心見守りツール」と名付けたプラスチック製の筒を配布した。

 筒の中に、親族らの緊急連絡先やかかりつけ医の診察券のコピー、老眼鏡などを入れ、冷蔵庫に入れておいてもらう。地元の消防署にも、冷蔵庫に連絡先が入っていることを知らせてある。実際、体調不良の高齢者宅に駆けつけた救急隊員が筒の中の書類を見て、かかりつけの病院などをすぐに把握できたという。

 こうした取り組みは防災対策などで各地に広がっている。自治会長の進藤輝美さん(60)は「普段から住民同士でつながりを持つことも大切」と話す。