高齢者孤独死10年で倍増 昨年県内190人、連帯感低下が拍車/徳島
2010年09月20日 徳島新聞
徳島県内で、お年寄りの孤独死が増えている。誰にもみとられず死後発見される独居高齢者は、この10年間でほぼ倍増し、年間200人近くを数えるようになった。高齢化が進み、独り暮らし世帯の急増に加え、地域コミュニティーが崩れつつあることなどが原因とみられる。
各市町村では、センサーで安否を確認するシステムを導入したり、新聞などの配達サービスと連携したりと、見守り体制の強化に取り組む動きが出ている。
県警によると、2009年に確認した65歳以上の高齢者の孤独死は190人で、2000年(105人)の1.8倍になった。10年も7月末までに123人を数える。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、今年の県内の独居高齢者世帯は3万世帯を超えているとみられ、10年前の2万3256世帯(国勢調査)の約1.3倍に増えている。
7月上旬、美波町内に住む60代後半の男性が、自宅で死後数日たった状態で発見された。郵便受けに新聞がたまっているのを不審に思った新聞販売店主が見に行くと、廊下で倒れていた。突然死とみられる。関係者によると、男性は数年前に妻と離婚してから独り暮らし。近所付き合いはほとんどなかったという。
都市圏だけでなく、徳島のような地方圏でも地域内のつながりが弱まりつつあるのが孤独死増の一因とみられる。
県内各市町村の見守り体制は、社会福祉士らが常駐する地域包括支援センターを核として、民生委員や老人クラブの訪問員らによる巡回活動が中心だ。しかし独居世帯が増え続ける中、従来の活動だけでは孤独死の抑止には限界があり、体制をどう強化するかが課題となっている。
美馬市美馬町で民生委員を務める多田雅一さん(62)によると、この3年で、独居高齢者が自宅で死後数日たって見つかったケースが少なくとも2件あった。「委員になった12年前、担当の3地区で高齢者の独り暮らしは1軒あったかなかったか。そのため孤独死なんてありえなかった」。担当地区では独居世帯が年々増え、今では10人余りいる。
その1人、西岡信男さん(80)は「近くに親族はいるが、体調が急に悪くなったらどうしようという不安は常にある」と心配顔だ。
同町では、住民らでつくる「AMEMBO防犯パトロール隊」が今春、駐在所や民生委員による巡回活動に加わった。藤川雅仁代表(57)は「高齢者への目配りには、今後もっと人手が必要になってくるはず」と話す。
見守り強化に民間の力を借りようという動きは昨年から目立ち始めている。鳴門、小松島、吉野川、阿南、石井、牟岐の6市町は、新聞や牛乳の販売店と見守り協定を結んでいる。
美馬市はこうした訪問活動を補完するシステムとして、人の動きを感知するセンサーを活用した独居高齢者の安否確認サービスを昨夏、県内で先駆けて始めた。今年3月には、木屋平地区の高齢者が亡くなった当日に発見された。新たな対策として注目を集めている。
鳴門教育大学の山本準教授(社会学)は「行政サービスだけでは本質的な解決にはならない。家族関係とともに、地域コミュニティーをどう再構築するかという課題が、地域ごとに突きつけられている」と指摘する。