県内、民生委員120人が空席 活動に壁、なり手不足/岩手
2010年09月09日 岩手日報
今年3年に1度の全国一斉改選を迎えた民生委員のなり手が不足している。県内も締め切り(7月中旬)を過ぎて、依然約120人が「空席」。委員に求められる役割が増えていることに加え、プライバシーの壁など精神的な負担を口にする人もいて、定数全体の3割が1期で辞退し、次の人選に苦慮する地域が多い。100歳以上の高齢者所在不明問題などで活動が見直される中、地域ぐるみのサポートが急務だ。
「こんにちは。きょうも暑いね」。盛岡市太田地区民生・児童委員協議会の千葉幸子会長(73)は担当する一人暮らしの80代女性宅を訪れる。一人暮らしや認知症の高齢者、生活保護者ら「見守り」が必要な世帯を月に1、2度訪問する。
この日はデイサービスの利用について相談。会話の中から女性の健康状態や生活で困ったことがないか把握する。「聞き役」に徹するのも役目の一つだ。
高齢者や児童への虐待が社会問題化することで、委員にかかる社会的責任や精神的負担も大きくなっている。前回改選時の平均年齢は62.4歳。3年後の現在は65歳を超えているとみられ、地域の見守り活動を高齢者が支えているのが実態だ。
滝沢村の牧野林地区は昨年新しいニュータウンが完成し、若い世代と昔から住む高齢者世帯が混在する地域。約350世帯を担当する民生委員大平百合子さん(66)は「1人で全世帯の様子を把握するのには限界がある」と打ち明ける。
同地区では、見守りが必要な住民を地域全体でサポートする「ゆいの会」を組織。大平さんを中心に月に1度、「お茶のみサロン」を開催して高齢者らと情報交換し、取り組みを充実させている。
県地域福祉課によると、盛岡市は定数500人中33人、そのほかの33市町村も定数2849人中88人がまだ空席の状態(8日現在)で、人選に苦労している地域もある。 同課の小田原照雄総括課長は「責任の大きさなどが負担で委員を続けない場合もある。地道な活動が中心だが地域の福祉を支えるためになくてはならない存在。住民の理解と協力で委員の活動を支えていく体制づくりも大切だ」と地域を挙げた担い手支援を求める。
民生委員とは 高齢者の生活や介護、一人親世帯の子育てなどさまざまな福祉相談に応じ、適切に行政への橋渡しを行う。児童委員も兼ねる。活動はほぼボランティア。活動費として年間5万2千円が支給されるが報酬はない。市町村ごとに定数が決まり、各地の推薦委員会を経て知事が推薦、厚生労働大臣が委嘱する。本県は今回の改選で定数を20人増やし全県で3349人となった。