高齢者見守りネット始動 小山市で孤独死対策

2010年09月4日 下野新聞

 地域住民が日常生活の範囲内で高齢者を見守り、行政との連携で孤独死を防ぐ「高齢者見守りネットワーク」の構築を進める小山市。モデル地区第1号に指定した桑地区で今月までに、見守り訪問事業がスタートした。
高齢者の異変にいち早く気付ける支援体制づくりに取り組む地域と、これを弾みにネットワーク拡大を目指す市。双方が手を取り合い、より良い支援の形を模索している。

 「安否確認は主として、玄関先での訪問声掛け、新聞受けや雨戸の状況確認による見守りとなります」

 桑地区で8月下旬、地域に住む高齢者の見守りや声掛けをする「あんしんサポーター」の研修会が開かれた。市や同地区社会福祉協議会などの担当者の説明に、真剣な表情でメモを取るサポーターたち。
参加した60代男性は「いつか自分も見守られる側になる。見守る側を経験することが将来のためにもなると思う」と前向きだ。

 同市北部の桑地区の高齢者は約660人。そのうち70歳以上で、見守りを希望する高齢者は91人を数える。

 対してサポーターに名乗り出たのは49人。市とともに訪問事業に取り組む同社協によれば「サポーターになってくれる人の都合を考えると、人数はまだ不十分」だ。「どこまで踏み込んだ支援をするのか」「(異変発見時の通報が遅れた場合に)責任を追及されることがあるのか」など活動への不安感から二の足を踏む住民もいるといい、「このケースではどう対応すべきかなど、情報共有を図ることで協力を得やすくなるのでは」と話す。

 市内では現在、65歳以上の高齢者は約3万5千人。そのうち一人暮らしは4800人を占める。市は数年後をめどにネットワークを市全域に拡大したい考えだ。

 本年度は、新たに大谷地区と美田地区をモデル地区に指定。地域に見合った支援体制を地元の民生委員らと検討している。8月には市全域を対象に、県新聞販売連合会小山地区と見守り訪問に関する協定を結んだ。

 順調にネットワークづくりが進むが、市高齢生きがい課は「人口が多く地縁のない高齢者も多い市中心部が課題」とみる。JR小山駅周辺を含む小山地区の一人暮らし高齢者は1500人を超える。「桑地区などの先行事例も参考に、その地域に合った見守り体制を地域とともにつくっていきたい」と今後を見据えている。