誰にもみとられず数カ月放置も…高齢孤独死、半年で110人/山梨

2010年08月31日 山梨日日新聞

 山梨県警が今年上半期、死因が分からず検視をした死体取扱件数が、5年間で最も多い661体に上った。このうち、独り暮らしの高齢者が誰にもみとられず息を引き取る孤独死は、昨年同期より21体(23.6%)多い110体で年々増加している。半年以上経過して見つかったケースもあった。

 県内の独居老人は増加の一途で、最近になって全国で100歳以上の高齢者の所在不明が問題化。見守り対策の一層の充実が求められている。県内の情報関連企業は11月をめどに携帯電話を利用したお年寄りなどの安否確認システムを試験的に実施する予定だ。

 6月下旬、甲府市内のアパートの一室で、独り暮らしの女性(82)が死亡しているのが見つかった。県警の検視の結果、死因は病死で、死後1カ月以上がたっていた。「最近姿を見掛けないので確認してほしい」。アパート関係者からの情報で駆け付けた警察官が、居間に横たわった女性を発見した。

 「近所付き合いが少なくなり、1人で寂しく息を引き取る高齢者が多い。何とかならないものか」。検視に当たったことがある捜査関係者から、こんな声が聞こえてくる。

 県警捜査1課によると、今年上半期に検視をした高齢者は全体の6割に当たる398体。315体(79.1%)が病死、42体(10.6%)が自殺だった。

 孤独死110体のうち、大半は亡くなって間もなく発見されるが、12体は死後1週間以上、2体は1カ月以上が経過してから発見された。多くは近所の住民や市町村職員が気付くケースという。

 5年間(上半期分)のデータをみると、孤独死は2006年が79体、07年が75体、08年が84体、09年が89体と増加している。県の統計(今年4月1日時点)で、独居老人は昨年より1043人多い2万8824人で、10年前(1万6858人)の約1.7倍となっている。

 県長寿社会課の小林健造課長補佐は「地域の密接なつながりがあれば、孤独死を防げる可能性がある。今後、行政や地域による見守りの機能をさらに高める必要がある」と説明。各市町村に対し、介護予防教室など独り暮らしのお年寄りの外出機会につながる取り組みを充実させるよう働き掛けていく。

 県内の情報関連企業4社が計画している携帯電話を使った安否確認システムは、携帯電話会社の協力を受け、衛星利用測位システム(GPS)や防犯機能の付いた携帯電話を独り暮らしの高齢者らに無償貸与。自宅や外出先で緊急事態が起きたときに、メール送信などで第三者に場所を含めて通知する。今後、試験に参加する市町村を募集するという。

 お年寄りの孤独死が増加の一途をたどり、都内では民生委員による巡回だけでは限界があるとして、千代田区や目黒区が、新聞販売店や配達サービスと連携するなど独自の見守り対策を始めている。

 山梨県内では9年前から、山梨日日新聞社と販売店主でつくる山日会が、新聞配達のネットワークを生かし、お年寄り家庭の急病人やけが人の早期発見を目指したボランティア活動を展開している。