高齢者見守り妙案共有…厚労省 自治体に補助も

2010年08月21日 読売新聞

 厚生労働省は、市区町村が策定する「地域福祉計画」に盛り込まれた施策のうち、高齢者の孤立化防止や所在把握などに役立つ先進的事例を全国展開する方針を固めた。

 社会問題化している100歳以上の高齢者の所在不明問題の対策の一環とする狙いがある。9月中に都道府県を通じて具体的事例を集め、今年中にも市区町村に紹介する。特に優良な事例は、国の補助事業とすることも検討している。

 社会福祉法では、高齢者や障害者らが地域で充実した生活を送れるよう、各市区町村が地域福祉計画を策定するよう求めている。

 計画は市区町村が独自に定めているが、高齢者の孤独死を防ぐため、民生委員や町内会による高齢者世帯の孤立化防止や、見回り活動などの支援策を盛り込んでいる場合もある。

 例えば、秋田市の地域福祉計画では、水道メーターの検針員が検針の際、独り暮らしの高齢者宅を見回るなどの支援策を定めている。

 また、愛知県北名古屋市の計画には、70歳以上の独り暮らしの高齢者に安否確認などを目的として牛乳を配達する事業が盛り込まれている。

 高齢者の所在不明問題をめぐっては、根底に地域社会や家族のつながりの希薄化が指摘される一方、2009年度末現在で全国1750市区町村の51.4%に当たる900市区町村が地域福祉計画を策定していないなど、行政の対応も必ずしも十分ではない現状がある。

 厚労省は今月13日、都道府県経由で計画を策定していない自治体に早期に計画を策定するよう通知しており、先進事例の全国展開も計画策定の動機付けとしたい考えだ。


団地室内人感センサー・配食サービス本人確認

 高齢者を見守る取り組みは各地で行われている。

 横浜市栄区では、区内の公田町(くでんちょう)団地の高齢者宅に人感センサーを設置。12時間以上、室内で人の動きが無ければNPOスタッフが訪問し、安否を確認する。

 北海道喜茂別(きもべつ)町は、町の公募に応じた「地域おこし協力隊」を結成。集落人口の過半数を65歳以上の高齢者が占める「限界集落」で全戸訪問を行い、高齢者の生活支援を展開している。

 長野県木島平(きじまだいら)村でも、消防団員などが、緊急時の訪問用として独り暮らしの高齢者宅の連絡先をリスト化した。石川県能美(のみ)市では、希望者に配食サービスを行い、配達時に本人からサインをもらえなかった場合、業者が市へ連絡を入れる仕組みを作った。

 また、岐阜県中津川市などでは、近隣住民や民生委員らが参加し、見守りが必要な高齢者の情報を図面に明記する「支え合いマップ」を作成。香川県小豆島(しょうどしま)町では、独居高齢者宅を訪問するなどのボランティア活動をした高齢者に対し、介護保険料の割引になる点数を付与する制度を展開する。

 さらに、ヤクルトグループは、全国約150の自治体などから、高齢者の見守りを兼ねた飲料配達を受託している。