高齢者らへのごみ戸別収集サービス、利用世帯3倍に増え重圧に/秦野
2010年08月16日 神奈川新聞
ごみや資源物を収集場所まで出すことが困難な高齢者、障害者らの世帯に対し、秦野市は2007年7月から、戸別収集サービス事業を実施している。ごみ収集だけでなく、一声掛ける安否確認も利用者から「ありがたい」と喜ばれている。9年目を迎えた現在、利用世帯は3倍に。高齢化社会を反映して、利用者は今後ますます増加する見込みで、対応を迫られている。
「ほほえみ収集」は、高齢者や障害者が、階段や坂道、健康状態などから自分でごみを収集場所まで出すことができないとき、市清掃事業所の職員が自宅まで収集に行くシステム。ベテラン職員が2tトラックを使用し、火曜と金曜の週2回、玄関前か敷地内から収集している。
申し込み世帯とは、市清掃事業所の職員が民生委員やケアマネジャーなどとともに面談を行うほか、緊急連絡先などを確認する。ごみが出ていないときは声を掛け、返事がない際はあらかじめ決められた連絡先に伝え、安否の確認をする。
ごみが出ていない場合、収集日を「忘れていた」という世帯や、入院したことの連絡漏れなどもあるが、中には返事がないため、緊急連絡先に通報、調べたところ体調不良で動けなかったケースもあったという。
2年前から利用している島津晴夫さん(90)、照代さん(82)夫妻方では、晴夫さんが要介護3、照代さんは要介護1。腰痛の照代さんにとって、団地の3階から収集場所までごみを持っていくのが大変だったという。照代さんは「玄関のベルを鳴らし声を掛けてくれる。時には『困ったことはありませんか』とも聞かれる。ありがたいこと」と話す。
事業を始めた02年には利用世帯は33世帯だったが、10年7月現在で92世帯となっている。市によると、安否確認を含む同様の事業は、県内では逗子市の「ふれあい収集」(01年3月)、厚木市の「愛の一声ごみ収集」(同年8月)が先駆的。秦野市の高齢化率は02年度に14.3%だったが、10年度(推計)は20.9%。13年度には24.2%になると見込まれている。
現在、市内全域を1台のトラックで回っているが、団地を含め玄関先まで行き、声も掛けるので時間がかかるのが実情。しかも高齢化が進展し、ニーズは増えるとみられている。
市清掃事業所の橋本晋一所長は「臨時に収集する世帯も加わっているので、トラックを増車するか回収日を増やすことなどを検討しなければいけなくなるだろう」と話している。