高齢者孤立死防止へ 前橋市がマニュアル、関係団体と連携/群馬

2010年08月14日 産経新聞

 前橋市は、誰にもみとられないまま亡くなる高齢者の孤立死を防ごうと、孤立死の事例や緊急時の対応方法などを盛り込んだ対策マニュアルを作成した。全国で所在確認が取れない高齢者が相次いでいるが、同市内では昨年8月、老人クラブ、社会福祉協議会など16団体が「地域包括支援ネットワーク」を発足し、独り暮らしの高齢者を地域で見守る活動を進めている。同市では各団体などへのマニュアルの配布で連携強化を図りたい構え。(西村利也)

 市介護高齢課によると、同市内では昨年、65歳以上の独り暮らしの人の孤立死は53件あった。高齢化、核家族化が進む社会情勢のもと、65歳以上で独り暮らしをしている人は、平成17年度には6108人だったが、21年度は7198人にまで増加。同課では「このままでは、孤立死が減少することは考えにくい」と危機感を強める。

 こうした状況を受け、同市では、地域で活動する各団体や家族と、専門家らの連携の推進が不可欠として、社会福祉士や介護士などの意見を取り入れたマニュアル「ひとりでも、年をとっても、安心して暮らせるために」を作成した。

 マニュアルではこれまでに市内で発生した孤立死の事例や発生要因、緊急時の連絡態勢などを説明。洗濯物や郵便物がそのままになっていたり、昼間や深夜に電気がついたままになっていないかなど、孤立死の察知ポイントについて解説している。

 また、電力会社やガス会社などが実施している高齢者の見守りサービスのほか、倒れている高齢者を発見した場合の対応や死亡後の手続きも紹介している。

 市では今後、9月と来年2月に市内13地区で地域会議を開催し、連携強化の進捗(しんちょく)具合や、独り暮らしの高齢者の現状などについて確認するとともに、今後の課題などを検討する方針。

 また、市民向けの簡易版マニュアルも作成予定で、同課は「地域での連携を活性化させ、孤立死の予防に役立てたい。高齢者の方が所在不明になる事態を避けることにも役立つはず」と話している。