センサーで孤独死予防−URが全国初の安否確認システム導入/横浜

2010年08月09日 神奈川新聞

. 高齢者の所在不明が全国で問題になる中、孤独死予防の先駆的な取り組みが横浜で始まった。住戸に取り付けたセンサーで居住者の異変をキャッチし、見守り役の住民が駆け付ける安否確認システムで、横浜市栄区の公田町団地(1160戸)が運用する。単身高齢者の急増を背景に相次ぐ孤独死の予防や早期発見を目指し、都市再生機構(UR、本社横浜市)が全国で初めて導入した。
見守り活動の負担を軽減し、居住者が室内で倒れたまま助けを呼べないような状況をいち早く把握することが期待されている。

 システムは、URが国土交通省の補助金などを使って構築。住民らが結成したNPO法人「お互いさまねっと公田町団地」が運用する。

 2010年度は一部世帯の試験運用で、7月にまず10戸に設置した。段階的に80戸に増やし、効果やプライバシーなどの課題を見極めた上で、11年度以降、団地全体に広げる方針だ。

 システムの鍵となるセンサーは、玄関や風呂、居室などに取り付け、赤外線で人の動きを感知し、ドアの開閉や照明、テレビのリモコンに反応する。データが同NPO法人の活動拠点を兼ねた「安心センター」へ1時間おきに無線で届き、担当者が朝夕の1日2回、パソコンで確認。各センサーに反応がないなどの異変があれば警告メッセージが表示され、住民や民生委員らが訪問や電話で安否確認を行う仕組みだ。

 同NPO法人の佐藤保司理事(63)は「対象世帯を一軒一軒回って状況を確認する通常の見守り活動より、労力を減らせる」とメリットを強調。「夏場に熱中症で倒れた際にも役立つのではないか」と期待する。

 見守り対象の住民も好意的に受け止めており、3年ほど前に夫に先立たれてから独り暮らしの女性(65)は「自分もいつどうなるか不安。離れて暮らす子どもに心配をかけたくない」と、センサーを取り付けた。単身の男性(75)は「今は健康だが、将来を考えると必要」と設置に協力した。

 システムは、センサーからのデータ以外の安否情報も入力でき、見守り対象の住民と道端で会ったときの様子なども記録可能。さらに、パソコンで入力した言葉をセンサーから居住者に音声で伝える機能もあり、行事を案内したり、生活上の注意を促したりすることができる。

 同NPO法人の大野省治理事長(79)は「システムだけでも、人による安否確認だけでも限界がある。さまざまな手法を組み合わせ、痛ましい最期を防ぎたい」と話している。

天井に取り付けられた赤外線などのセンサー
=横浜市栄区の公田町団地