現状の社会システムでは限界、高齢者安否把握で民生委員などから不安の声/神奈川

2010年08月05日 神奈川新聞

 地縁や血縁が薄いとされる県内でも、高齢者のみの世帯や独居が増える中、お年寄りの見守り活動に取り組む民生委員やNPO法人などからは、現状の社会システムでは高齢者の安否を把握し切れないと不安の声も上がる。

 県民生委員児童委員協議会事務局では「地域でお年寄りを見守ることの必要性が強調されているが、超高齢社会が到来する中、従来の民生委員制度の仕組みに頼って地域ネットワークを維持することは、時代にそぐわなくなってきているのでは」と不安視する。

 横浜市栄区の公田町団地自治会長で、住民による見守り活動を展開しているNPO法人「お互いさまねっと公田町団地」理事長でもある大野省治さん(79)は「行政の担当者が時々出向いて安否確認するのでは限界がある。地域住民が顔の見える関係の中で、直接会って確認していくしかないのでは」と住民の協力に期待を寄せる。

 超高齢社会を踏まえた社会システムも求められる。高齢者福祉に詳しい県立保健福祉大の臼井正樹教授は、「これまで子どもなどの親族が親の安否を確認しているものとされてきたが、親族自体が高齢化し、対応し切れなくなっているケースの表れではないか」と指摘。

 「現在は死亡届は親族などが出すのが原則で、行政が安否を確認して行うものではないが、年金の不正受給などの問題も出てくるならば、超高齢社会を踏まえて、社会が高齢者の安否確認にどのような役割を担うべきか、プライバシー保護やコスト負担の課題も含めて、議論が必要だろう」と話している。