高齢者支援TV電話で/奈良・黒滝村
2010年07月27日 朝日新聞
村内の全420世帯にテレビ電話を設置し、高度な情報通信技術(ICT)を使って高齢者の安否確認や生活を支援するシステムづくりに、黒滝村のNPO法人「和(なごみ)」が取り組んでいる。築100年の県指定文化財「旧村役場庁舎」を情報ステーションにして、子育て世代の主婦らがオペレーターになり、テレビ電話を通じて高齢者の生活相談に乗る仕組みだ。(神野武美)
◆黒滝村・NPO 来月試験運用
同村は過疎高齢化が進む定型的な山村で、高齢化率(65歳以上)は約40%に達する。
「和」は、木村正子理事長(41)ら女性が中心になって2年前、子育ての支援などを目的に設立した。昨年、ICTを使ってどんな場所でも安心して暮らせる地域づくりを目指す総務省の「ユビキタスタウン構想推進事業」に応募するよう村に提案。サーバーの整備やテレビ電話の設置費用などの全額8000万円の交付金を国から受けることに成功した。
◎簡単操作、ケーブル回線で低額
同村生まれの木村さんは、京都に嫁いだが、14年前に父親の介護のため、夫(46)とともにUターン。男児3人を育てるかたわら、村の社会福祉協議会に介護ヘルパーとして勤務した後、「山間に住む高齢者には買い物や娯楽のための移動手段が必要」と7年前、車いすが載せられる福祉タクシーの会社を始めた。
テレビ電話システムを導入したのは、高齢者でもリモコンで簡単に操作できることが理由だ。ほかにも、インターネット回線の場合は月4千~5千円かかるのに対し、ケーブルテレビの回線を使えば一戸あたり月300円程度と低額なことや、来年7月にテレビが地上波デジタルに全面的に切り替わることもある。「買い替えやアンテナの設置にお金がかかるので、テレビはもう要らない」というお年寄りの声を聞いたのもきっかけになった。
8月末までに村内の12戸で試験運用を始め、12月ごろには全戸にテレビが入る予定。テレビ電話は情報ステーションにつながり、オペレーターが相談を聞き、病気や困りごとの生活支援をする人を現地に派遣する。テレビにはオペレーターの顔だけが映り、利用者の安否確認だけができるようになっている。
テレビはまた、地デジが見られるほか、村内の情報交流サイトや、学習塾や大学のサイトにもつながる。交通が不便なため、「塾通い」が大変な村の子どもたちが「テレビ受講」できるようにするという。
現在、オペレーターなど8人を募集中。当面は国の緊急雇用などで人件費は賄うが、将来は若い母親や若者がICTを使ってホームページ制作の仕事を受注したり、村の産業の情報発信を盛んにしたりして、雇用の拡大につなげたいという。木村さんは「若い人がこの仕事に参加して村の情報に通じた『おせっかいやき』になれば、村は活気づくはず」と話す。